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王と王妃と白い鬼の息子との徒然なる日々――【夏の月】
「尹儒、あれを見てみよ――」
「ちちうえ、ちちうえ……あれは、なんといういきものなのでしゅか?」
「あれは、蛍という生き物だ――。そういえば、いつだったか……王宮にいる守子達が貧民街のすぐ近くに……蛍の群れが集う穴場があると言っていたな。尹儒、まだ眠くはないか?」
「はい……ちちうえ、ぼくは……まだねむくなんてなってましぇん……」
眠気に誘われつつあるというのに、熱心に目をごしごしと擦っている尹儒を見て、あまりのおかしさに我は思わず吹き出しそうになってしまう。だが、蛍の群れが絶景として見れるのは夏しかないため――今がちょうどいい機会だ、と改めて感じた我は今にも眠ってしまいそうな尹儒を背中におぶりながら一匹の蛍の後をついていく。
(この機会を逃せば――きっと我は後悔するに違いない……王宮では蛍など見れないし、何よりも……この子が蛍の群れを初めて見て喜ぶ顔が見てみたい……)
一匹の蛍の後をついて行った我々の目に真っ先に飛び込んできたのは【想ガ沼】と書かれている看板が立っているすぐ脇に、ひっそりと存在する小さめの沼だった。
この沼が蛍の群れが見れる穴場らしく、その辺りを一帯を金色の光を煌々と放ちながら蛍の群れが優雅に飛び回っているのだ。
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