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第10話

「俺を…もっと気持ちよくさせてみろ。できなければ、お仕置きだ」 「はい、仰せのままに」  ベッドに仰向けに寝た戴智の体じゅうを舐め回す。喉仏に舌を這わせ、鎖骨の辺りをすべる。乳首をぐるりと何周もして、舌がへそに沈む。  黒い草むらを食み、その下で垂れているペニスを口で含む。鈴口を舌先でつつき、亀頭に吸いつく。足のときと同じように、その表情はまるで子供だ。大きな飴を頬張るような舌使いで、その下にある袋も丁寧に舐める。  その舌の心地よさは、全身を震わせるだけでなく、脳内をも狂わされそうだ。まるで、脳味噌ごと舐められて洗脳されているみたいに――  “ああ、僕の大好きなご主人様の飴。どうか、飴がやめられない卑しい犬には、鞭も与えてくださいまし”  そんな幻聴が聞こえた気がした。戴智は体を起こすと、(いぬ)に命令を下した。 「四つん這いになれ」 「はい、ご主人様」  東は戴智に尻を向けて、四つん這いになった。まるで今から何をされるのかを、予見していたとでもいうふうに。  仕事ではいつも先を読んで、戴智が指示をする前には動いている。探し物をしていると、“これですか”と渡してくれる。  それは、プライベートも同じなのだろうか、と戴智の胸が踊る。  四つん這いになった東の後ろで膝立ちをし、戴智は平手で東の尻を張った。 「あうっ」  東の背中がのけぞる。肩甲骨が動くのが、やけになまめかしい。  今度は、反対の尻を打つ。寝室にパンッと音が響く。 「ああっ、もっと…もっとお仕置きしてください…っ」  声を震わせ、東が喜ぶ。何度も尻を打つうちに、白い肌はピンク色に染まり、東の声も徐々に大きくなる。  戴智がニヤリと笑い、背中に覆い被さってささやく。 「いやらしい変態犬だな。これじゃ、お仕置きじゃなくてご褒美だろう」  どっちでもいい。東が痴態をさらし、スパンキングを喜んでくれるなら、お仕置きでもご褒美でも、何でも与えてやる――  SMというより“SMごっこ”のお遊びにすぎないが、それでも戴智の体の奥からわき上がる何かに、喜びを禁じ得ない。 「ひいっ!」  東の口から、唾液が垂れる。戴智の指が、とろとろに熟れたアヌスに侵入した。 「こんな所をビショビショにして、はしたない犬め。あふれ出ないよう、栓でもしてやるか」  ぬるり、と指を抜くと、温かい愛液をまとった指を舐めた。  その瞬間、脳天に打撃を受けたような衝撃があった。 (この男を、蹂躙してみたい)  それは、SMという人間の遊びではない。支配する雄とされる雄、アルファとオメガ。アルファとして、オメガが欲しい!  オメガの愛液の味と匂いで、戴智のアルファが呼び覚まされた。  戴智はアナルバイブのスイッチを入れた。小さなモーター音が鳴り、小刻みに振動する。それを赤く色づいたアヌスに差しこんだ。 「ほら、これでちょうどいい栓になるだろ」 「うぁっ! …ぁ」  細い肉の道に、振動が響く。 「さあ、これでイッてみろ」  戴智は立て膝で座り、四つん這いの東を後ろから眺める。振動は、東の体を犯す。我慢できずに、東は自分のペニスに手を伸ばした。 「おっと、手は使うな」  東の熱を持った手首をつかむと、両手を手錠で拘束した。ワンタッチで外せるオモチャだが、東はご主人様の命令のため、手錠を外して自慰などしない。バイブが刺さった尻を高く上げ、隙間から愛液を垂れ流し、涙を流してよがり狂った。 「ああーっ! ご主人様…、もっと…お仕置きを」  よほど我慢できないのか、尻を前後左右に振る。ツルリとバイブがすべり落ち、戴智はまたバイブをアナルに差す。 「はあっ…!」  汗まみれの体が艶やかに光る。髪を振り乱し、東はのた打ち回る。 「いいぞ…お前のその姿」  ドクン、と下腹部に心臓が移ったような衝撃。戴智のペニスは一回り大きくなり、完全な勃起ではないが、斜め下を向いている。  戴智の手が、東に刺さったバイブをつかむ。ゆっくり抜き差しをする。奥へ突っこんだ後は、小さな円を描いてバイブを回す。 「あぅっ…! き、気持ちい…」  声がかすれ、口元はよだれを垂らし、体は薄くピンク色に染まる。ペニスの先端からもアヌスからも粘液を漏らしている。  そんな東が扇情的で、戴智自身が感じさせて痴態をさらさせていると思うと、全身の血が沸騰しそうな感覚におちいる。  戴智は自身の下半身が勃起しかけていることに気づいていたが、無理に手で扱いて大きくしようと思わなかった。挿入できる硬さにはならないだろうと予測できた。  それでも、これだけ反応したのだ。これから東をいじめて痴態を見るたびに、完全に勃起するのだろうかと考えると、新たな期待に体じゅうが震える。  うつぶせで尻を高く持ち上げ、ひいひい泣きわめく東に、戴智が背中から覆い被さって耳元にささやいた。 「よーし、いい子だ。ご褒美にイカせてやる」  オメガを、東を蹂躙している――そんな気がして戴智はとても心地よかった。自分が達しなくても、充足感がある。  戴智は東のペニスを握ると、愛液のぬめりを借りて擦った。子猫を愛撫するように指で竿を撫でる。あられもない声を張り上げ、東はシーツの上に射精した。  うつぶせのまま顔を横に向け、荒い息を整え、潤んだ目で戴智を見上げる東に、戴智は何度もキスをする。  汗と体液まみれの体を、シャワーで流すことにした。背は高いが細身なため、戴智より東はやや軽い。それでも一人前の男性の体を抱き上げるのは力がいる。戴智は額に汗をにじませながら抱き上げようとした。 「くっ…華奢だと思ったが、重いな」 「無理しないでください、戴智さん。自分で歩けますよ」  東が床に足をつける。立ち上がった瞬間よろけてしまい、戴智に支えられた。 「ありがとうございます」 「大丈夫か? 無理をするな」  東の体にバスローブを羽織らせ、腰を抱えてバスルームに連れて行く。東が体を洗っている間、戴智はシーツを取り替えた。  ふと、手錠や首輪、まだぬめりを帯びているバイブが目に入る。さっきまで、このベッドで東を乱れさせていたと思い出すだけで、戴智の下腹部が反応する。 (やはり、あいつが俺を変えてくれるかもしれない)  その日は二人抱き合って眠り、翌朝は九時過ぎまでベッドでのんびり過ごしていた。

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