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第18話

「もっと淫乱になれ。もっと乱れていやらしい犬になれ。でないと、妄想の中でしかお前を犯してやらないぞ」  その強気の言葉攻めは、戴智が取り戻した自信からきている。ずっと萎えることなくペニスが硬いまま、下腹部にぴったりと張りつくほどに勃起している。 「ああっ、戴智さん…! 愛してますから…お願い!」  東はアヌスを抜き差しする速度を上げた。日に灼けた赤い肌は、淫靡な熱でさらに赤くなる。 「そのまま、挿れてみろ」  戴智に言われるままに、騎乗位でアヌスに亀頭を当てた。ゆっくり腰を沈める。愛液が潤滑剤になってペニスを飲みこんでいく。奥まで入ると、東は戴智にキスをした。  舌をねじ入れ深いキスをしていると、下の口もぎゅっと締まる。 「うっ…、キツいぞ、東…」 「もう…離しませんよ」  食らいついて離さないアヌスにペニスがからめとられ、戴智はたまらなくなって腰を動かし始めた。 「駄目ですよ、戴智さん。動かないで」 「なぜだ…動いた方が、気持ちいいだろう」 「このままじっと――」  東は戴智に覆いかぶさる形で抱きしめる。 「お互いの熱を感じていましょう。射精感が来たら、動いてください」  東は再びキスをする。気持ちいい舌の動きと、小さくもれるあえぎ声、オメガの濃密な匂い。それらが合わさって、戴智は全く萎えることなく東の中で硬さを保っていた。 「なるほど…」  戴智は東の汗ばんだ背中に手を回してつぶやく。 「ポリネシアン・セックスか」  数日間を抱き合ったりソフトな愛撫で過ごし、最終的に挿入するが激しい運動はしない。より密着感が増し射精したい欲望が継続することで、普通のセックスよりも満足感が段違いだ。  射精を焦ることがないため戴智に負担がかからない、東はそう考えた。 「その割には、激しいプレイをしてしまいましたが」  戴智の胸で、東は苦笑をもらす。前立腺マッサージに自慰。ポリネシアン・セックスでは、激しい愛撫はしない。 「東…」  戴智は東の頬を両手で挟み、自分の方を向かせた。 「いろいろとありがとう…愛してる」 「戴智さん…」  嬉しさに目を潤ませる東に、戴智はキスをした。東の中で、戴智のペニスがビクンと跳ねる。 「あっ…」  色っぽい声に反応し、またペニスが跳ねる。  三十分ほどそうしていただろうか。ドライオーガズムを二回も迎えた東の中で、戴智はもう我慢の限界だった。 「東…もう…出るかも」  東が腰を動かす。戴智もそれに合わせて腰を振る。互いの恥骨がぶつかり合う。そんな感触でさえ愛しい。 「あっ…あ、東…!」  東の背中にしがみつき、戴智は果てた。アヌスの中が精液で満たされるのを感じ、東は戴智の首筋にキスをする。 「戴智さん…うなじを噛んではくれないのですか」  うなじを噛むということ。それは、番になる証。 「俺は…お前と番になれるのだろうか」 「もちろんです。番になる理由は、何も子孫を残すだけではないと思います」  絶対服従の中にある、深い愛情。アルファが選んだ、ただ一人の相手。征服欲にも似たその強い愛情は、子孫を残す以上に意味があるものだ。  そのとき二人は、そう感じていた。  六日目の朝はゆっくり寝過ごし、王永市には午後三時ごろに戻った。  こうして、盆休みの充実した六日間は終わった。日常から離れてリフレッシュもでき、戴智は東に対して愛情も覚えた。  翌日、プレゼンに向けてのラストスパートということもあり、打ち合わせが念入りに行われた。  工場への指示、納期。プレゼンを行う社員に綿密な打ち合わせ。村瀬がプレゼン担当でなくて幸いだ。全員への指示が終わってから、戴智は各社員にメールを送る。打ち合わせとは、全く違った内容を。  その間、工場への指示は東が代理で行う。  村瀬は事情を知らず、偽の情報をジースティ金属に流す。  九月に入ればまた連休があるのだが、九月末のプレゼンのため、そうはいかない。日曜日は工場も完全に休みのため、『新開発部』も日曜日は休みだが、敬老の日は半数が休み、秋分の日は残りの半分が休む。当然、部長である戴智や室長、課長クラスは休めない。 「久慈」  戴智がデスクから東に話しかける。  東はパソコン画面から、視線を戴智の方に向ける。 「休みが少なくて悪いな。プレゼンが終わるまで、我慢してくれ」 「我慢も何も、王永部長」  東は机の上で手を組み、にっこり微笑む。 「盆休みのクルーズが、最高の休日でした。この仕事が一段落すれば、また休日を楽しめます」  その言葉に戴智も癒やされ、笑顔になる。 「次の土曜の夜、予定はあるか?」 「いいえ、空いてますよ」 「ちょうどよかった。食事にでも行かないか。フランス料理は好きか?」 「ええ、大好きです」  土曜の夜、就業後に戴智と東はフランス料理を食べに行くことになり、戴智はすぐにレストランを予約した。  二人が予約したのは、王永一族の分家が経営する店で、ミシュランガイドにも載る三つ星レストランだ。  個室に通され、戴智がワインを選ぶ。ジュブレ・シャンベルタンを指定すると、ソムリエが“かしこまりました”とワインリストを閉じ、一礼をして個室を出た。 「東、乾杯の前に見せたい物がある」  戴智はテーブルに、ビロード張りの小箱を置いた。 「これは…」 「結婚指輪だ」  蓋を開けると、プラチナ製で平打ちのリングが二つ入っていた。 「東のサイズがわからないから、刻印はしていない。はめてみてくれ」 「あ…ありがとうございます!」  東は二つある指輪のうち、少し小さい方をはめてみた。 「…少し回りますね」  戴智が額に手を当て、残念そうに言う。 「あー…、もっと細かったのか。わりと自信があったんだがな」 「惜しいですね。おそらくワンサイズ落とせばぴったりかと」 「式は十二月に予定している。それまでに宝石店でサイズ直しするか…、もしくは東が太るか」 「ご冗談を」  東が楽しそうに笑っていると、ワインが運ばれてきた。ソムリエがラベルを見せ、封を切り、栓を抜く。グラスにほんの少しワインがそそがれ、戴智がテイスティングをする。戴智がうなずくと、二つのグラスにワインがそそがれた。  十月初旬に両親に報告、中旬から下旬に親族一同に正式な報告、十二月には挙式で、正月休みに新婚旅行。新居は王永本家の敷地内に建て、完成までは戴智の部屋に東が住む。  完璧な計画に、二人は乾杯した。

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