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第19話

 その日は東が戴智の部屋に泊まった。二人で住むときの予定を立てる。ベッドはそのまま使う。クローゼットは余裕があるから、当座の衣類を収納するのに困らない。書籍や日用品なども、戴智の部屋は広いため、充分本棚やチェストなどを置ける。  新居ができるまで、東は今のマンションを解約せずに、荷物置き場として使う。  調理器具は、母親の奈津子が勝手にそろえた物があり、東は“奈津子伯母様に許可をいただいたら、使わせていただきます”と言った。 「仕事が忙しそうだから、と母が世話を焼きにくるかもしれんぞ」 「それは嬉しいですね。伯母様にもぜひ、お料理を教わりたいです」  二人で風呂に入った。バスタブの中は柑橘系の香りがする泡でいっぱいだ。  背中をもたせかけ、のんびりと泡に包まれていた戴智が、東に“体を洗ってくれ”と頼んだ。  東は戴智と向かい合うように座り、泡を首筋に撫でつける。手のひらは肩をすべり、二の腕から指先まで、両方を丁寧に洗う。 「もう、旦那様のお世話ができるなんて…嬉しいですね」  東の指は、両の乳首を撫でる。 「うっ…」  声を殺そうとしても、バスルームでは声が響く。その声を聞き、東はさらに乳首を撫でる。 「こら、よせ…、…あ」 「旦那様を気持ちよくさせてあげるのも、オメガの務めかと」  東の手が泡の奥にもぐる。まだ硬くならないペニスを、丁寧に洗う。 「戴智さん…」  少し硬さを持つようになったが、挿入できるほどではない。我慢ができずに、東は戴智の上にまたがり、両肩に手を置いた。 「早く…あなたが…ほしいっ」  東はアヌスの周辺に、戴智のペニスを擦りつけた。 「あっ…はあっ…」  あえぎ声がバスルームに響く。戴智が指でアヌスを広げてやると、一段と大きな声が出た。 「そんなはしたない声を出す奴は、その口をふさいでやるぞ」  ふさいでほしくて東は、あられもない声を上げる。色っぽい声を出し続ける東の口を、戴智がキスでふさぐ。  キスをしているうちに、戴智が完全に勃起した。 「早くベッドに行きましょう」  硬くなったペニスで素股を楽しんでみたかったが、それよりも体の中で戴智を感じていたくて、東はバスタブを出るとシャワーで泡を流した。  ベッドの中でもつれ合いながらキスをして、戴智は東の赤く熟れたアヌスに指を差し入れた。 「ああっ、は、早く…戴智さん」  まだろくに慣らしてもいないのに、東は挿入をうながす。戴智は全く萎えることなく、先端からは先走りも出ている。  戴智が正常位で挿入した。最奥までペニスが入ってから、東は腰をゆっくりと動かした。 「あ…、僕の中…戴智さん…が」  ゆっくりだったのが、次第に早くなる。 「あんまり動くな…っ、すぐイッてしまうっ」  戴智が東の腰を抱えて抑えるも、いつもは従順なはずの東が言うことをきかない。 「いやっ…、それなら…時間…たてば…もう一度――」  ようやく勃起不全が治ったというばかりなのに、一晩に二度のセックスを要求される。戴智は意地悪な笑みを浮かべた。 「ほう…いやらしい奴だな…お仕置きされたいか?」  戴智は東の尻を、手のひらで叩いた。 「あんっ」  東が体をのけぞらせる。戴智はもう一発、尻を叩いた。東は興奮して、さらに強く腰を振る。  愛の鞭が、白い尻に赤い花を咲かせる。花が咲きほこるごとに、戴智の奥に眠る加虐性が目覚める。もっといじめたい、もっと愛したい―― 「もっと…もっと…戴智さ…ん」 「痛いのが好きか? こんなに涙を流して」  戴智はお仕置きに嬉し泣きするペニスを強くつかんだ。 「ああっ!」  先端からはさらに涙があふれ、戴智の手を伝って根元の茂みに消える。東がきつく目を閉じると、涙がにじみ出る。その涙を吸い取り、戴智は耳元でささやいた。 「もっと淫乱な東が見たい」 「戴智さん…」  東は両足を戴智の体に絡ませた。勢いよく腰を振り、自分のペニスも擦る。 「ああっ、戴智さん…愛してますっ…!」 「東…俺も、愛してる」  射精の瞬間、東は目を開けた。イクところを真上から見下ろされる、そんな羞恥プレイのつもりだった。  東がいじらしくて可愛くて、戴智もすぐに果てた。  射精後も硬さは変わらない。挿入したままで、戴智は東に覆いかぶさる。 「…この中には、子供ができるタネは一つも無いんだな…」  射精はしても、無精子症に変わりない。いくらセックスをしようと、両親が望む孫は産まれない。 「でも、戴智さん…」  東は戴智の汗ばんだ髪を撫でる。 「僕は妊娠しませんから、いつでもセックスができます。お腹が大きくなれば、無理ですからね」  そんな冗談まじりのことを言うが、どうやら本気のようだ。硬さが変わらない戴智を体内に埋めたままで、東は腰を振り始める。 「待て、東っ…! 腰が持たな…」 「じゃあ、戴智さんは…動かず、じっと…」  足を絡ませたまま、東は激しく腰を振る。戴智は東の尻を叩きながら、優しいキスをする。飴と鞭。可愛い東に、愛の証とお仕置きを。  二度目の絶頂の後、二人は抱き合って眠った。

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