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第21話

 週末の金曜日。会員制のワインバー。通常なら貸切も団体も断っているが、王永財閥系列の経営する店のため、今日だけは特別だ。  プレゼンで勝利した『新開発部』のメンバー全員でお祝いをする。  ワイングラスやソフトドリンクのタンブラーを持ち、みんなが乾杯の音頭を待っている。  店の奥、レンガの壁に、ディスプレイのように置かれた大きな樽の前で、戴智がスピーチをする。 「みんな、よく頑張ってくれた。この勝利は一人一人のものだ。だが、これから大きな仕事が待っている。来週からも全員一丸となって、精進しよう」  乾杯、の声に全員のグラスが上がる。  端に寄せられたテーブルに、サラダやピンチョス、カナッペ、ソーセージやチーズ、フルーツの盛り合わせなどが置かれている。立食パーティーだ。  今日だけは無礼講。社員たちと冗談を交えて談笑する。  ふと、戴智が東の方を見ると、女子社員四名に囲まれている。戴智から笑みが消えた。普段の仕事のときとは違い、照れたような無邪気な笑みを見せている。女子社員から“かーわいい~”と声が上がる。  その後、戴智は平静を装ってはいたが、内心穏やかではなかった。 「東、さっき女子社員たちと何を話していた?」  黒のベンツの運転席は、戴智も東もアルコールが入っているので、代行業者が座っている。戴智は東とともに、後部シートにいる。 「女子社員…ああ、宮坂さんたちですね。いえ、“久慈くんはいつ、王永部長と番になるの”なんて散々聞かれまして」  代々アルファの王永と、分家の中でも権力を持つ久慈。久慈がオメガであることを、多数の者が知っている。  お似合いだから、早く番になればとはやしたてられ、東は照れてしまった、ということだ。 「…なんだ」  ホッと一息ついた戴智は、何気なく窓の外を眺めているが、安心しきった笑顔であることを、東は見抜いていた。  東が戴智の手に、そっと自分の手を重ねる。 「嬉しいですよ、戴智さん。ヤキモチ妬いてくれたなんて」 「誰がヤキモチを妬くか」  それ以上すねてしまうと気の毒で、東はそれ以上何も言わなかった。ヤキモチを妬かれた嬉しさは、東のマンションにつくまでずっと重ねられていた手が表していた。 「あっ…、待って…戴智さ…んっ」  東の部屋につくなりジャケットを脱がし、ネクタイを緩めながら激しいキスをする。耳たぶを甘噛みし、ボタンを外しながら寝室まで歩く。  寝室についたときにはベルトをゆるめられスラックスも下ろされ、東ははだけたシャツ一枚と下着だけでベッドに押し倒された。 「待たないぞ。女の子たちにあんな笑顔を見せて。お前を好きになるやつがいたら、どうするんだ」  両手首を押さえつけ、戴智は東を見下ろす。 「大丈夫ですよ。いずれ戴智さんと番になるかもしれません、と話しましたから」  さすがに戴智と番になる相手に、王永を知る者なら手は出せない。だが、東の普段人には見せない表情は、戴智だけの秘密にしたかった。  戴智が東の耳たぶを噛んだ。歯を立てていたため、東が痛さに肩をすくめる。 「“可愛い”って言われてたな。そのときは何を話していた?」  首筋を舐め、すぐに舌は胸元に下りた。ワインと淫らな舌のせいで、東の肌はほんのり赤い。 「あっ…、戴智さんのこと…素敵な方…です、って話し…たら」  戴智は乳首を噛んだ。引きつるような嬌声を上げて、東は話を中断した。 「早く続きを言え」  今度はペニスに手を伸ばす。下着からはみ出て、戴智の愛撫を待っているそこは、戴智の手のひらの感触に反応し、ビクンと大きく揺れた。 「そ…そしたら…おノロケされた、って言われ…ああっ」  戴智が東の下着をずらし、フェラチオした。わざと話ができないように、淫らな愛撫を続ける。細かく動く舌のせいで、東は話もできない。 「ん? その続きは? ちゃんと話せないなら、お仕置きだな」  東の体を裏返してうつぶせにさせると、尻を高く持ち上げさせた。下着を脱がせて放り投げると、突き出した尻を戴智が叩く。 「あんっ」  シーツをつかみ、衝撃に耐える。右の尻の次は、左の尻。パンッと音が響くたび、東のペニスは上下して、シーツに先走りの糸をたらす。 「ほら、話してみろ。おノロケされた、の次は?」 「おノロケ…されたって言われたから…あはぁっ!」  東が話し始めると、今度はアヌスに指を突き刺した。中をゆっくりかき回す。戴智の指が二本になる。抜き差しを何度か繰り返した後、指を抜こうとすると菊門がギュッと締まった。 「いやらしい穴だな…。上の口はなかなかしゃべらないのに、下の口はがっついて、俺の指を離さないぞ」 「あ…、お願い…もっと」  第一関節の辺りが入った状態で、戴智は動きを止める。 「ちゃんと話ができないのなら、もうやめるぞ」  もう片方の手で、東の尻を叩く。 「あんっ…! み、宮坂さんたちにからかわれ…て、それで、照れてしまっ…」  そのために“可愛い”と言われた。東が女性にちやほやされて、鼻の下を伸ばすタイプではないことは、戴智にもわかっている。ただ東の可愛い面を誰かに見られた、という事実が気に入らない。

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