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第29話
「結婚式…?」
戴智は固まってしまった。結婚式のことまでは考えていなかった。だが、形だけの儀式を行うだけで、何ら問題はなさそうに思えた。
「そうよ。私たち、好きな相手と式を挙げられないばかりか、誓いのキスまでしないといけないのよ」
それは困った。戴智は頭をかきむしる。両親のことだ。結婚式をしないとなると、親族に顔向けができないと反対される。
「…式は仕方がないとして、和式にすれば三三九度はあるが、誓いのキスは無い」
一奈は腕を組み、ソファーにもたれて大きなため息をついた。
「私たち、結婚式を挙げるため、ウェディングドレスをもう作ったのよ」
「はぁ?」
一奈たちの気の早さに、戴智は開いた口がふさがらない。
「あ…あの…」
璃子が遠慮がちに、戴智に話しかけた。
「わがままかもしれませんが…できれば一奈さんと式を挙げて、写真も撮りたいんです。一生の記念だから…」
「わがままじゃないわよ、璃子」
一奈がまた、煙草をくわえる。
「女にとって、結婚式やウェディングドレスがどれだけ重要なものか、教えてあげなさいよ。戴智、璃子はね、お祖母様から花嫁が身につける“サムシング・フォー”に当たる、“サムシング・オールド”のアンティークものの真珠をいただいたのよ」
「わ、わかったから、姉さん」
早口でまくし立てる姉を抑え、戴智は壁の時計を見上げた。
「もう昼過ぎだな。そろそろお茶でもと思ったけど、せっかくだから四人で食事に行かないか? 結婚式の相談なら、他人に話を聞かれても差し支えないだろう。何なら、マズい話は筆談にすればいい」
一奈のご機嫌を取るため、戴智は一奈に食べたい物は何かと聞くと、一奈は璃子が食べたい物にすると答えた。
「璃子さん、遠慮せずに何でもお好きな物を言ってください」
「あ…それじゃ…和食がいいです」
四人は戴智のベンツで、料亭に向かった。
十一月には結納を交わし、親族にも報告をした。
十二月になり、徐々に冬らしく本格的に冷えこむ日も出てきた。年末に向けて慌ただしくなり始める。
ここは、王永市から離れた結婚式場。顔が知られていないから、周囲にバレることはない。
二組だけで結婚式を挙げ、一月に行われる毎年恒例の王永グランドホテルでの新年会を、結婚披露宴とする。
花婿の控え室で、真っ白なタキシードに着替えた二人は、鏡の前で髪を整えていた。
鏡の中で目が合った。
「緊張しますね、戴智さん」
「そうだな。東、お前でも緊張するか」
「してますよ、ほら」
東が戴智の手を取り、自分の胸に当てる。ベストとシャツ越しでも、東の鼓動はよくわかる。
指先は冷たくて、目つきもいつもより頼りなげだ。そんな東が可愛くて、戴智は思わずキスをしてしまった。
「戴智さん」
小さく笑いながら、東が戴智の唇に人差し指を当てる。
「誓いのキスは、まだですよ」
今度は東の手首をつかみ、指先にキスをする。
「神にじゃなく、東に何度でも誓ってやる。俺は一生、久慈東を愛する」
東が戴智の手を引き寄せ、指先にキスをする。
「僕もです。一生、あなただけを愛し続けます」
そのまま吸い寄せられるように、唇が重なる。ブートニアの形が崩れるのもお構いなしに、強く抱きしめ合った。
東の背中を抱きしめていた手は、東の尻まで下りてきた。優しく撫でていたはずの手は、やがて激しく揉む。
「戴智さん…こんなときに」
尻の間を指で刺激する。密着して股関同士を擦りつける。
「まだ時間はある。どうせ、女性陣の支度は長いだろう」
擦られるうちに二人とも勃起して、スラックスの前が盛り上がっている。
東がひざまずく。前を開け、下着をかきわけ、硬くそそり勃つペニスを出してくわえた。奥深く飲みこみ、強く吸い、亀頭を舌で愛撫する。
「あ…東…」
荒い息で愛しい人の名を呼び、髪を撫でる。自然と腰が動いてしまい、東がそれに合わせて顔を前後させる。
「くっ…、あぁっ」
戴智は壁にもたれた。膝からくずおれてしまいそうだ。東も自分のスラックスを開け、窮屈そうにしているペニスを出し、自分で擦る。
「東…もっとよく見せてくれ」
東をテーブルに座らせ、戴智は東の自慰を鑑賞した。白いタキシードにブートニアという花婿の格好で、東が淫らに自慰にふけるさまはそそられる。
戴智が東の足から、スラックスと下着を抜き取った。
「いい格好だな…初夜が待てない、淫乱の花婿か」
「あ…戴智さん…だって…待てない…でしょう」
東は尻を持ち上げ、指でアヌスを広げてみせた。中指を抜き差しして、戴智を誘う。
テーブルに座らせたまま、戴智は東の腰を抱えて挿入した。東が体をのけぞらせ、声をもらした。
「うっ…」
声を懸命にこらえるが、どうしても出てしまう。控え室の壁は、おそらくそんなに厚くないだろう。戴智はポケットチーフを出すとクルクルと丸め、東に噛ませてやる。
「…くっ…、エロいな…まるで…レイプされてる…みたいだ」
結婚式に、控え室でレイプされる花婿。そう考えただけで、下半身に一気に血がたまる。
「あ…東…向こうを向いて…くれない…か」
戴智が東の体を裏返す。テーブルに手をついた東に、戴智が後ろから挿入する。
「ん…、はっ…」
背後から手を伸ばし、東のシャツのボタンを外す。後ろから襟をつかむと、少し熱を持って赤みがさしたうなじが露わになる。戴智はそこに、歯を立てた。
「んっ…んんッ!」
番の証を受けながら、東はアヌスからとろりとした蜜をこぼす。
再び、戴智は東の体を裏返した。後背位になったのはうなじを噛むためだ。東の乱れる表情を見たいため、戴智は正常位を選んだ。
コンコンコン。
突然、ノックの音がした。
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