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第36話
「またか。結婚式の日を思い出すな」
スラックスだけでも穿こうと慌てて席を立ちかけた東の肩を押さえつけ、戴智は大股でドアに歩み寄ると、ドアを開けた。ドアの向こうでは『新開発部』の社員が書類を手にしている。
「部長、工場から報告書が送られてきました」
「ああ、ご苦労」
書類を受け取り、ちらりとデスクの方を見る。ドアを開けられては、今さらスラックスも穿けない。デスクは足元が隠れるからいいものの、この社員がデスクの裏側を見れば仰天するだろう。仕事中に東が下半身丸出しで、しかも勃起させている。
「確認印をお願いします」
「後で持っていく。今、パソコンの調子がおかしくて、久慈に直してもらっているところなんだ」
それを聞いた東は、慌ててパソコンを操作するフリをする。
「あ、はい、お願いします。失礼いたしました」
一礼すると、社員は出て行った。
東が大きなため息をつく。
「…部長…意地悪なことはやめてください…」
東の顔は真っ赤で、目も潤んでいる。二人きりでされる意地悪は嬉しいが、こんなふうにいつバレるかわからない状態でのプレイは、冷や汗をかく。
「悪かった」
たいして反省している様子もなく、楽しそうな笑みを浮かべながら、戴智は鍵をかけると東を椅子から立ち上がらせた。
「ほら、デスクに手をつけ」
東が言われた通りにすると、戴智は突き出された双丘を指で押し広げ、赤く色づいた門を鑑賞する。
「…お前は優秀なオメガだな…。いやらしい汁が、わざわざ発情期にしなくても出るなんてな」
指をそっとねじ入れると、ぬるりとした感触がある。
「あっ…ん…」
東の体がのけぞる。戴智の指の動きに合わせて、前の屹立も大きく揺れる。
「あまり垂らし過ぎるのもよくないな。きれいに掃除してやろう」
透明な粘液を出す穴に、戴智が舌をねじ入れた。
「っ…! た…戴智さ…、だめ、そこは…!」
粘液を吸い取り、舌でくすぐり、たわわに実った袋を下から揉む。大声を出すわけにはいかず、東は額に汗を浮かべながら唇を噛む。
戴智は椅子に座った。ベルトを外し、ファスナーを下ろす。
「東、ここに座れ」
大きく育った肉茎が、東を誘う。先端を濡れた穴に押し当て、東はゆっくりと体を沈めた。
ずぶずぶと、粘膜と粘液に包まれながら進んでいくだけで、もう戴智はたまらなくなり、いきなり激しく腰を上下させた。
「あっ…、は…」
下から激しく揺さぶられ、東の中がキュッと締まる。
「うっ…、キツいぞ…東っ」
それでも腰は止まらない。絶頂に向かって速さが増す。
声は殺しても、結合部分の音は消えない。上気した体から発する雄の匂いも、近づけばわかる。もしもまた誰か入ってきたら、今度こそこの情事が明るみになってしまう。
そんな危険さをはらんだスリルは、二人の体をいっそう燃え上がらせる。
「あ…、もっと…もっと」
恥ずかしさから拒否をしていた東は、今ではもう、ねだるようになってしまった。もっと奥まで、めちゃくちゃに突いてほしい。今が仕事中であることも、正式なカップルではなく不倫関係にあることも、すべて忘れるほどに。
「戴智さん…、も、もう…」
東の絶頂が近いことを知り、戴智はそばにあったボックスティッシュを何枚か引き抜いて、しずくをこぼしている東の先端に当てた。
「あっ…!」
ドクン、ドクンと大きく脈売って、戴智が用意したティッシュの中に全てを吐き出した。
何度か大きく腰を上下させ、戴智は東の中から分身を引き抜くと、新たに出したティッシュの上に射精した。
戴智の膝の上で荒い息を吐き、東は戴智に体をもたせかけた。後ろから東を抱きしめ、耳元に“愛してる”とささやく。
「…僕たちは…不倫っていう関係になるんですね…」
「ああ。お互い相手には公認だがな。それでも、ゾクゾクする関係じゃないか」
「確かに、僕も初めはそう思ってました」
東は天井を見上げる。見慣れたオフィス。その中で、上司と体を繋げる背徳感。
「僕たちは…許される関係じゃないんです…」
戴智と東、一奈と璃子が別れずにすむ、苦肉の策。
バレなければいい。でも、いつバレるかわからない。それに、周囲を騙し続けていないといけない、罪悪感。
戴智は東を強く抱きしめた。
「そうだ、墓まで持って行く秘密だ」
これから何十年と、苦しむことになるだろう。だが、そんなリスクを背負わないと、結ばれなかった二人だ。
別れるぐらいなら、そんな十字架をいくつでも背負ってやる、と戴智は東の汗ばんだうなじにキスをした。
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