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第4話

やっとのことで胃の不快感がおさまり、望はホッとした。トイレの水を流し、ミネラルウォーターを口に含む。広海も安心したのようで、望を優しく抱き寄せると、はぁーっと長い息を吐き出した。  洗濯洗剤の清潔な香りが鼻腔にふわりと薫った。冷や汗まみれの肌に彼の穏やかな体温が伝わる。それがひどく心地良かった。日本人男性の平均身長ほどある自分をすっぽりと包んでくれる広海の大きな体躯は、心身ともに不安定な望をしっかりと支えてくれるようだった。 「……平気?」  広海の凪やかな低い声が、体の芯に響いた。望は小さく頷く。 「もう大丈夫だ……悪かったな」 「ううん、全然いいよ」  そう言って彼は、望の頭をやんわりと撫でてくれた。依然、金槌で激しく殴られているかのような頭痛がしていた。けれども彼に触れられて、少しだけ痛みが引いた気がした。  体力を使い果たしたせいで、猛烈な眠気に襲われていた。瞼がとろんと落ちていき、呼吸が自然と深くなり、意識が霞んでくる。 「……ヒロ」  ぼそりと広海の名前を呼び、「今日はもう寝る」と伝えた。 「シャワーは明日?」広海が訊ねてくる。 「明日……俺、今日はソファーで寝るわ。くせぇし」 「気にならないから、一緒に寝ようよ。着替え、手伝うからさ」  望は広海に支えられ、ふらりと立ち上がった。視界がぐらっと揺れ、頭に一際鈍い痛みが走ったが、それを最後に意識は途切れた。

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