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第12話

 広海は洗い終えた食器を、乾燥機に移していた。望が一服し終えて戻ってきたことに気付いていないようで、調子外れな鼻歌を歌っていた。曲名は忘れたけれど、多分、ミスチルだ。  望はリビングのソファに寝転び、広海の大きな背中をじぃっと見つめた。日頃から運動しているだけあって、その後ろ姿は逞しい。骨太で筋肉質な彼の体躯と自分の薄っぺらい身体を見比べて、こうも違うものなのかとため息をつきたくなる。 「――……あれ? のんちゃん、いつからそこにいたの?」  仰向けになり、目を閉じていると、頭の上から広海の声が降ってきた。まぶたを上げれば、広海に見下ろされていた。 「お前が鼻歌歌ってた時から」 「恥ずかしいな」と広海は苦笑しながら頭を掻き、ソファに腰をおろした。 「今日は練習に行くのか?」 「ううん。今日は練習場所が確保出来なくて休み。代わりに明日の夜、行ってくるよ」 「ふぅん」  広海に頭を撫でられ、その心地よさに目を細めた。彼の大きな手のひらは、二日酔いの頭痛を和らげてくれる気がする。 「もう一回、寝る?」 穏やかな口調で訊ねられ、頷く。 「お前は?」 「……どうしようかなぁ」 「寝れば?」 「眠たくないんだけどね」  広海は苦笑する。 「一緒に寝てほしい?」 「どっちでも」 本当は一緒に寝たかったけれど、素直に口にするのは何だか照れ臭かった。 「じゃあ、俺も横になるだけなろうかな」  広海が優しく笑った。

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