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おまけ その1

広海からプロポーズされた後、ソファでだらだらとしているうちに眠ってしまい、昼過ぎに目を覚ました。 天気が良く、リビングには初夏の陽気が流れ込んできていた。爽やかだがじんわりと暑く、身体は寝汗をかいていたため、広海ともう一度シャワーを浴びた。 昼飯を作るのが面倒だったので、マンション近くの定食屋で遅めの昼食をとったのち、このまま帰宅したら、今日はもう外出したくなくなるだろうと感じたため、スーパーで夕食のハンバーグの材料と缶ビールを買って、ふたりは自宅へと戻った。 案の定、それからのふたりはずっとベッドに入り浸っていた。 真昼間から寝室のカーテンをすべて閉めきり、ベッドの下に服や下着を脱ぎ散らかし、ぐちゃぐちゃに縺れて解けない糸のように、ふたつの裸体は絡み合った。汗みずくで呼吸は乱れに乱れ、肉体には疲労感と倦怠感がのさばり、一歩も動きたくないのに、それでもふたりは互いを貪った。 唇が痺れるほどにキスをして、素肌をまさぐって、至るところを愛して、そして溶け合うようにひとつになって。全身はもうくたくたで、出せるものも何もなくなり、身体の芯からどろどろに熟れて崩れていきそうな感覚になりながらも、どうしようもなく幸せで。広海にゆるゆると揺さぶられ、快楽の海を揺蕩いながら望はうっすらとまぶたを上げれば、恍惚と表情を歪める彼と目があった。 まるで溶けだしたキャラメルのように、広海はふにゃりと甘ったるく笑うと、吸い寄せられるように望の唇を啄ばんだ。 ふたりの左手は蔦のように絡まっている。じっとりとした仄暗い空間でも、一切の澱みなくつやつやと光る薬指のプラチナリングは、幸福の象徴だった。ふたりの永遠なる不可侵の愛をかたちにしたものだった。 値段がいったい何だと言うのだ。ステータスなど、知ったことではない。ふたりだけが、その真価を知っていればそれで十分だ。このリングは、ふたりの指に通ったその瞬間から、紛れもなく世界一の結婚指輪だ。 この世を天国や地獄に喩えたとして、そのどちらへ転がっていこうが、互いの手を取り合って、隣を歩いて、支え合っていこう。どんなに辛いことや悲しいことがあってもふたりで分け合い、嬉しい時や楽しい時は一緒に笑っていよう。 心の底からそう思える相手との口づけに、望はふっと笑みを浮かべながら、そんなことを想う自分自身に、案外かわいいところがあるじゃねぇかと揶揄してみた。胸のうちに面映ゆさが込みあげてきた。

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