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第2話 雨上がり。
「……………君が好き」
初めてだった。誰かに告白されるというのは。志希は高鳴る鼓動を必死に抑えようとする。袖で咄嗟に顔を隠すものの、きっと耳は真っ赤なのだろう。
わからなかった。何故雪兎がいきなりこんなことを言ったのか。そして気づいてしまった。雪兎は志希の方を向いている。向いているけど焦点はあってなかった。そこにはいない、誰かを見ているのだろう。
中途半端に長い髪。とろんと眠そうな瞳。背はそこまで低くない。普通、といったところだろうか。でもなぜだろう。少しだけ愛しいと思えてしまう。よく見れば長いまつ毛、綺麗な色をした唇。
「なあ、暁……………」
「ん?……………っ」
軽いリップ音が、雨の中に吸い込まれていった。触れるだけの口づけ。なのに、こんなにも熱い。
「……………はっ、はは。まさかキスされるとは思ってなかったよ」
「俺も」
「何?嫌じゃないの?」
「そういうことにこだわりはない」
「じゃあゲイなんだ」
「げ、ゲイじゃない!……………そういう、恋愛とかに性別の見境を気にしてない、ってことだ」
また、ほんのり頬を染めて。志希は純粋なんだね。僕とは大違いだ。雪兎は軽く微笑んだ。
「ここ、どこだか知ってる?」
「校庭の真ん中」
「誰か見てるかもよ?」
「どうせ傘で見えない」
それが、合図だった。まだ熱が残る唇をお互いに重ねる。軽く、ついばむように、何度も角度を変えて。息が苦しくなって口を開ければ、待っていたかのように舌が入り込んでくる。
お互いの舌を重ねる度に、背筋に痺れが走る。上顎をなぞれば声が漏れ、段々と二人は乱れていった。
「んっ……………は……………この後、どうする?」
「最後まで…………いいのか?」
「もちろん…………あっ……………元は僕が誘ったみたいなもんだからね」
「ん………………もうちょっと、だけ……………」
吐息が、肌をくすぐる。求め、求められ、志希は未知なる快楽を知った。唇離して少し目を開ければ、潤んだ瞳で頬を高揚させ、彼を誘惑する雪兎がいる。
いつの間にか雨音は小さくなっていき、やがて消えていった。淫らな甘い音が誰もいない校庭に響く。それすら気づかずに、二人は欲を満たしていった。
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