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第7話 見えない。

 今日の授業も終わる頃。雨雲が流れてきた。また、雨が降るのだろうか。雨は嫌い。でも何故浴びる?きっとそれは、自己満喫。 ……………雨の中には、あの人がいるから。  帰りの会の時、パラパラと降ってきてしまった。正直、嬉しいのかもしれない。雪兎は窓を濡らす雨をずっと見ていた。  止んでくれ。嫌だ、怖い。でもあの人がいる。会いに行かなくちゃ。バラバラな気持ち。雪兎は真っ先に教室を飛び出した。 「はっ、ははは……………」  誰もいない校庭。虚しく残る笑い声。雨、雨、雨。ほらまた涙が。馬鹿だな。もうあの人はいないのに。  こんな気持ちいらない。全部雨が流していってくれたらいいのに。悲しくない。寂しくない。僕は一人じゃない。必死に言いかける。 「……………帰らないの」  声がして振り向くと、傘を持っているのにさしていない志希がいた。びしょ濡れだ。  志希の目には、雪兎がとても悲しそうに写っていた。彼は俺には見えないものを見ているのだろう。それは誰かかは知らない。知る必要もない。 「……………好きだよ、志希」  なんで目を見て言わないの。わかってる、その好きはまやかしなんだ。俺を誰かに重ねて見ている。俺が好きなんじゃない。後ろにいる見えない誰かが好きなんだ。  初めてあって、その日に告って、勢いで体を重ねて。なんとなく、気づいてた。利用されてるんだなって。 「好き、志希……………だから置いてかないで」 「置いてかない」 「一人にしないで。独りになっちゃう」 「離さないよ」  ただ雪兎にとって都合のいい言葉を並べる。力無く笑う雪兎は別人だ。孤独を嫌う、幼い少年。志希は少し低い位置にある唇に、口づけを落す。 「傘、さしてないのにキスしていいの?」 「……………いいんだよ」  もう一回。雪兎は志希を求めた。首に手を回して、周りの目なんか気にしない。この雨に校庭を見る人なんていない。 「志希、」  耳元で呼ばれる名前が冷たい。でも体は反応してしまう。利用したければ、してもらっても構わない。例えそれが自分に向けられた愛じゃなかったとしても。 ……………初めて、「好き」と言ってくれた人だから。

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