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第13話 騙し合い。

 学校につくと、雪兎は校門であった志希と結弦と空のところに走って行ってしまった。そもそも雪兎が走るのが珍しい。  そんなにも彼らを大切にしているのか。それとも依存してしまっているのか。風磨が考えを巡らせていると、突然声がかかった。 「……………両方なんじゃない」  驚いて振り返ると、そこにはさっきまでいなかった理雲がいた。朝会って初めの言葉がそれか。 「お前は俺の心を読んでるのか?」 「…………ソウの考えることくらいわかるよ」  冗談のつもりで聞いたのだが、案外真面目な答えが帰ってくる。全く、理雲は雪兎や他の子と違って何を考えているかわからない。  今もそう。普段どこにいるのかわからないのに横をピッタリと並んで歩く。腕が触れ合うくらい。 「…………雪兎のことは大丈夫だと思うよ。ソウは僕のことに集中しないと」 「ソウデスネ」  上目遣いの理雲。不覚にもドキッとしてしまい片言になる。俺は気をつけていないと理雲に食われる。風磨はそう感じていた。  何をするのも計算して操る理雲。それで今まで何人の女と男を落としてきたのだろう。理雲が男に手を出したのは女に飽きたからだ。簡単に落ちてしまうから。 「理雲、今日の宿題やってきたか?」 「……………やるわけないでしょ」 「やっぱりなー。なら一緒にやろうぜ」  端から見れば何気ない会話。でも二人は今も騙し合って落とし入れようとしている。理雲が宿題をやらないのはわざと。それを了解の上で誘う風磨。  彼は他の人と違う。どんな手を使っても罠にかからない。たまに見破りさえする。これはゲーム。風磨を落す、ただそれだけのこと。理雲はそう思っていた。愛なんてないのかもしれない。いや、このゲームには必要ない。  脱いだ靴を取ろうとして、風磨が屈む。靴箱の影になってできる、みんなからの一瞬の死角。理雲は風磨に素早く口づけをした。 「っ!」 「……………ホラね。僕に集中してないと」  食べられちゃうよ?そんな理雲の本音が聞こえたような気がした。

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