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蒼くて淡い 5
「4月か9月か……」
「羽月先生調べ物ですか?」
「え?!あ……ちょっと……」
卒業式が済んでも教師は春休みがあるわけでもなく、瀬戸内と共に過ごした土日を経て、俺は日常に戻った。
それでも色々と気になることはあるわけで、職員室のパソコンで留学についてあれこれ調べていると、隣に座る数学の先生に画面を覗き込まれ一瞬焦ってしまった。
「留学……?もしかして卒業したあのイケメンの子……えっと、名前……」
「……瀬戸内ですか?」
「そうそう、瀬戸内君。あの子だけでしたもんね。先生、担任だったから入学までの手続きもやるんですか?」
「今回は急に決まったんで、例外である程度のことは……」
「頑張ってくださいね」
「あ、はい」
日本と違って海外の大学は4月入学とは限らない。
調べてみると、うちの学校の場合9月入学が割りと多く、それでも4月入学がないわけではない。
3月に高校を卒業すると9月まで間が空く分、在学中に4月入学の手続きをすれば4月というパターンもある……らしい。
瀬戸内の場合、留学自体も急に決まったし、4月入学はほぼないはず。
だけど、可能性がゼロなわけではない……
それに、留学はもう決定しているから行かないパターンも薄く、アイツの性格上俺の為に行かないとか、そんな安易なことで行かないなんてこともありえない。
だからこそ……
「なんて聞けばいいんだよ……」
再び画面に視線を移すと、自然とそんなボヤキが口から漏れた。
*
放課後、職員室で雑務を片付けていると、暇だから校門まで迎えに来たと瀬戸内からLINEが来て、足早に外に出て校門へと向かった。
夕方ともなれば下校する生徒も疎らで、だけど瀬戸内は気を使ってか校門の少し離れた所で待っていて、
「お疲れ様」
「あぁ」
こんな当たり前な何気ない会話をして、当たり前のように俺たちは並んで歩き出した。
「あのさ」
「なに?」
「……いや、やっぱりいい」
昼間ぐるぐると考えていた留学のことについて聞こうと思いつつもどうしても聞けなくて……
そんな俺の心中を見破るように瀬戸内は話を続けた。
「ケイちゃんてさ、すぐに顔に出るから何考えてるかすぐわかるんだけど」
「え?!」
「留学のこと……どうするか気になってるんだろ?」
「……まぁ」
「俺もその事で話したかったから迎えに来た。ケイちゃんちだと、俺、冷静な判断が出来なくなりそうだからさ、外で話したかったんだ。だからちょっと寄り道しよう」
瀬戸内から話をしたいと言われると思ってなかった俺は、そんな急展開に少しだけ気持ちが振れた。
そして、引っかかった一言……
……冷静な判断が出来ない……
それを意味することは何なんだろうか。
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