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第52話/後編/もっともっと知りました。

「本当に何度教えたら覚えるんです、貴方の頭にはおが屑でも詰まってんですか。それとも、わんわん君を締め殺す気満々ですか。だったら犯罪を未然に防ぐため、その両腕いっそバッサリ切り落としてやりましょうか」 「た、隊長さん? あの何もそこまで言わなくても」 「ヒック……わんわん、ごめんなさい……死ななくて良、かった!」 えぐえぐと泣きっぱなしの書記さま。 その両腕は現在動かせないよう、後ろ手にぐるぐる縄で縛り上げられてます。 仕方なく、涙やら鼻水をそっとティッシュで拭き取る俺。たまにチンッて鼻かまさせたり。 ……うん。 何やってんだろう自分、とか思わないでもない。 生徒会室の三人掛けソファーに、書記さま・俺・隊長さんの順で座り、その横の床(ふかふかカーペットの上)には庶務さまが正座中。 縄も正座も当然ながら隊長さん命令です、はい。 「全ては僕の浅はかな行動が原因です! わんわん君には大変なご迷惑をお掛けし、誠に申し訳ありませんでした」 「わんわん、ごめん……」 青筋を浮かべた隊長さんに怯え、震えながら謝る庶務さまと書記さま。 「まあまあ、隊長さんもそれくらいにしてあげなよー」 「俺様を突き飛ばしやがったのは許せねーがな」 「いえ、こういうことは厳しく叩き込まないと書記さまのためになりませんから」 「そうですよ何甘いことを言っているんです二人とも。いいですか、犬を飼うにあたり先ずは飼い主の心構えと正しい知識、また私たち全員の協力無くしてペットの幸せは有り得ません。 そもそも、わんわん君は家族の一員として大切に優しく扱ってあげないとダメなんですよ? それなのに危害を加え、意識を失わせるだなんて」 犬(ペット)の飼い方と幸せについて、熱く語り出す副会長さま。 微笑み王子と呼び名がつく程の美形なのに、相変わらず健在の残念っぷりだ。 副会長さまの話によれば 俺たち二人が小部屋に入った後しばらくして、異常なスピードで仕事を終わらせた書記さま。 その泣き笑いのような顔で 「わんわん……!」 とつぶやく頭上には、花が咲き、鳥や蝶が舞っているように見えたとか。 .

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