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第53話

立ち上がった書記さまは真っ直ぐ小部屋の方へ駆け寄り、扉を開けた。 そして隊長さんに抱きつく俺の姿(生徒会室内から丸見えだったそうデス)を見た途端、止める間もなく中へ。 次いで会計・会長・庶務さまも乱入し、狭い空間がごった返すのを呆然と眺めていたがやがてハッと我に返り、書記さまを取り押さえるよう皆に指示して俺を救出。 という流れだったそうだ。 一応目は覚ましたが、フラフラとしか歩けない俺をお姫様抱っこで生徒会室のソファーまで運んでくれたのも、副会長さまだったらしいし。 うん、そこは意識がはっきりしなくて良かったけどね……姫抱き……ううっ。 とにかく、助けてくださって本当にありがとうございました! マジで大っ変感謝してます。 してます、が。 最近じゃ皆それなりに俺を人間として見てくれるようになった(ような気がする)というのに、この人だけは相変わらず俺イコール、犬扱いなんだよなぁ。 副会長さまの目には本物の犬の姿で映ってんじゃなかろうか、と思う時もあるし。生徒会室内に犬(ペット)用飼い方マニュアルまで用意するほどの徹底ぶりだしさ。 ちなみに家族が犬嫌いらしく、自分で飼った経験は無いそうだけど。 多分その反動でかなりの犬好きになったっぽい。 何気に犬好き多いな、この学校。 「あ……えっと、飲みます?」 「飲みたい! わんわん飲ませ、て?」 紅茶の入ったカップに手を伸ばした俺を、じいっと見つめる書記さま。 泣きっぱなしで疲れてるだろうし喉乾いたのかな、と思って声をかけたら、おねだりされました。 うん、まぁそうか。 縛られてるせいで一人じゃ飲めないもんね。 しょうがない。 別に、潤んだ目で嬉しそうに笑う書記さまの顔がちょっと可愛いなぁ、キューンときた! とかじゃないんだからっ(ツンデレ風) あ、でもどうしよう。 俺まだ紅茶のいれ方をマスターしてないんだよな。テーブルにあるのは全部隊長さんが作ったやつで、書記さまと庶務さまのカップは空っぽのまま置かれているし。 うーん、コーヒーで良いかな。 「わんわんの、で、良い」 「へ、これ?」 嬉しそうに瞳を輝かせ、何度も頷く書記さま。 .

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