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第65話
大人たちは慌てて部屋を調べ、すぐさまノラ犬を発見。
無理やり引き離すことでようやく回復に向かいます。(一時は生死をさ迷う危険な状態だったそうです)
原因は動物アレルギー。
他にも幾つかの要因が重なり、重い症状が出たようだと医師から説明があったそうですが。
だから、悲しむのを承知で引き離すしかなかった。
家族の判断によって命を救われた書記さまですが、この時激しく痛めた喉は完治しないまま。元々話すのが苦手だったこともあり、以降ほとんど喋らなくなります。
多分……喉の痛みよりもノラ犬との別れが、そうさせたのでしょう。
その頃まだ、側仕え候補の一人だった僕の家にノラ犬(あの子)の保護が任されます。
書記さまのお気持ちや詳しい事情も知らず、ただ純粋に可愛がり、一生懸命世話をしました。
けれど、やがて正式な側仕えに選ばれた後、一度だけあの子の話をしてしまい――。
屋敷を抜け出して、あの子に会いに行った書記さまは僕の家に着く前に見つかり、連れ戻されました。
原因となった僕にお咎めはありませんでしたが、しばらく部屋に軟禁状態となった書記さまの見張りと話し相手をするよう命じられて。
大人たちも知らない『真実』を知ったのです。
確かに動物アレルギーの症状は出ていました。しかしそれは軽微なもので、元々軽い小児喘息持ちだったこと。
何より以前からたまに公園であの子(雑種のノラ犬)と触れ合ってはいたけれど、体調が悪い時に少し咳が出るくらいで、問題は無かったこと。
むしろ悪質なインフルエンザと虚弱体質が原因で死にかけたこと。
微熱があるときに家を抜け出し、公園で雨に降られてびしょ濡れになったから悪化した、だなんて。
さすがにそれは自業自得でしょう。
長い時間をかけ、泣きながらたどたどしく話す書記さまに思わず突っ込みを入れそうになったのを、今もはっきり覚えています。
書記さまがあんなに喋ったことなど、わんわん君と出会って以降を除き、僕は他に知りません。
先程も言いましたがあの後、書記さまは滅多に話さなくなりましたから。
二人ともまだ幼かったし、当時は病気のことも本当はよく理解出来ていませんでした。
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