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第68話
特に書記さまと会計・会長さまの三人は絶対にわんわん君の部屋へ行かせたくありません。
理由は不明ですが。
などと考えていた最中、ブチッと捕縛用の縄が切れる音。
「ダメー! わんわん俺だけの。絶対、誰にもあげない!」
「え、うおわぁッ」
「は!?」
「待っ、書記さま――」
一瞬でわんわん君を肩に担ぎ、生徒会室を飛び出す書記さま。
制止しようと伸ばした手はかすりもせず、慌てて追いかけるが部屋の扉を開けた時には既に遥か彼方。どちくしょう!
『わんわん、お家帰ろ? 今日から俺の隣にお引っ越し。わんわんのお家は俺のお家、俺のお家はわんわんのお家。一緒にご飯食べて、お風呂入って、同じベッドで一緒に寝れる……楽しい!』
脳内でリピートされるのは先程書記さまが発した言葉。
それと二人だけの小部屋で、懐かしさからうっかり肌に触れてしまった時の、わんわん君の反応。
後者を思い出した途端に心臓が跳ね、次いでキュッと締め付けられる。
そんな不可思議な現象の理由はやっぱり不明ですが、今はとにかく書記さまを追いかけねば。
散々目の前に餌をちらつかされ我慢させられた分、自由になった今は普段よりもはるかに興奮しきって何をするか分からない……。
ああ、どうしてこんなことに。
書記さまへのご褒美に、わんわん君を。
そう考えた僕が間違っていました。
寮部屋を隣同士にすれば書記さまも喜ぶだろうし、何より二人を近くに置くことで手間が省けて楽になる。
そんな馬鹿なことを企み安易に行動すべきじゃなかったのに。
ごめんなさい、わんわん君。
これからは今まで以上にもっとずっと大切に大切に君を守るから。
誰にも傷つけさせないし、勿論書記さまからもこの身を挺して護ってみせる。
だからどうか、僕が助けに行くまで――
「無事でいてください、わんわん君!」
とりあえず書記さまはしばらく拘束してわんわん君に会わせないようにするか、ああいっそ本気で死んでもらった方がわんわん君のためにも良いでしょう。
そんな謀反を考えながら、僕(と生徒会の皆さま)は必死に寮を目指して走るのでした。
【隊長の誤算/END】
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