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第88話
「ただの湯中りですよ、水ぶっかけときゃそのうち治る。うちのバカが迷惑かけてすみません先輩」
突如話しかけてきたのは、メチャクチャ良い声の風紀委員長さまだ。
会うのはこれで二回目。艶のある低音に身体中がぞわぞわします。筋肉かっけー!
対する敬語の会長さまは……いきなり話し方が変わると別人みたいでぎょっとすんね。
実は大浴場に来る途中、エレベーター前で風紀委員長さまに遭遇。ちょうど朝の見回りを終えたとこらしく副委員長さまも一緒でした。
お二人に会うのはこの時が初めてだったから緊張したんだけど。
「俺、猫派なんで。とりあえず俺に迷惑かからないようにだけ宜しくー」
そんな怠い感じの副委員長さまも、チャラ会計さまには態度が激変。
「俺、書記の犬っころよかチャラ猫のが気になるわ。ねー、やっぱ会計さぁ、そろそろ俺の飼い猫にならない?」
「うっせ、近寄んなキモ! 誰が猫だ、死ねよこのキチガイ風紀!」
「みゃーみゃー鳴いちゃって、かーわい」
「こいつマジで嫌だ、言葉通じないし!」
……あれは珍しい光景だった。
副会長さまいわく、副委員長さまは会計さまの天敵だそうです。
で、会長さまの敬語の理由は。
「風紀委員長には去年うちの愚兄がえらい迷惑をかけたからな。俺様もあの人には頭が上がらん」
ということらしい。去年何があったのよ。
「起きろ、鼻垂れ」
「――ぶおっ冷たぁ!?」
「ふむ。意外と元気そうだな、鼻血は
もう止まったか」
「えっ風紀委員長、いたた」
「骨に異常は無いようだが、痛むならちゃんと診てもらった方が良いぞ」
会長さまに頭から水をかけられ、意識が戻った会計さま。
しゃがんだ風紀委員長さまが鼻を軽く摘まみ怪我の有無を確認している。
ハッ、そうだ俺も謝んなきゃ。許してもらえないかもしれないが。
「あの、俺のせいですよね。すみません、大丈夫ですか会計さま」
「わ、わんわん! わんわん……の、わんわんが……ぐふ、ブパッ」
「ぎゃあああ血いいぃぃっ!?」
俺と目が合った途端みるみる真っ赤になった会計さま。
から、吹き出された鼻血が俺に降りかかる。
「――重症だな。分かった、風紀の副に頼んで手取り足取り腰取り付きっきりで看病させよう」
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