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第2話

「王妃様……それに尹儒様――我が此処にお招きしたのは、皆でこの西瓜を食べたからでございますんや……こんなに大きな西瓜は王宮内でも中々手に入らんのでこざいますやからね……さあ、どうぞ――召し上がってくだされや」 「わあ、誠に見事な西瓜でございますね……魔千寿、本当にこの西瓜――食べてもいいの?」 「ええ、ええ……勿論でございますや……尹儒様。久々に我とこうしてお話し下さったゆえ――我は幸せな気分や……遠慮せず……」 (魔千寿……?尹儒の面と向かって話すのが久々……?) そんな尹儒と木偶の童子という名ではなく魔千寿と呼ばれた術師との会話を聞いて、私は訝しげな表情を浮かべてしまう。以前、契婚の儀式を執り行うために燗喩殿とこの祝寿殿へと足を運んだ時には、今目の前にいる術師は木偶の童子と呼ばれていた筈だ。 いや、それよりも私にとって重要な事は――この国の王子の一人である尹儒が何故、この隔離された祝寿殿で日々を過ごしている魔千寿と呼ばれた男と関わりがあるのか不思議でならなかった。しかも、尹儒が木偶の童子改め魔千寿と改名したであろうその事実さえ私は知らなかったというのに尹儒は知っていて――尚且つ、親しげに話しかけていたという事に何故か胸騒ぎを覚えてしまう。 「さて、この西瓜を食べながら……我らの未来についてのお話しをしませんかや……王妃様。この国に関わる事でもありますんや――よく聞いた方がいいやもしれませんやしね」 「わ、我らの……未来について?あ、貴方は一体何を……っ……!?」 王であり夫である燗喩殿との仲が破綻している訳でもないし、彼がこの国の現王でこれから死するまではその御役目を果たすという現状だというのに、まるで近い内に国が破滅してしまうといわんばかりの魔千寿の言葉を聞いて更に訝しげな表情を浮かべながら私は叫ぶように尋ねるのだった。

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