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第7話

▽ ▽ ▽ ▽ 「そんなに緊張しなくてもよいわ――妾は別にお主らをむしゃ、むしゃと食らう鬼ではないゆえな。何よりも、魄よ――お主は妾の弟である薊の親友__そして、現王の妃じゃ……よって安心するがよい……これからも、薊と__それに、ほれ―――薊の子の珀王(はくおう)の事も宜しく頼むぞ…ぞ―――ああ、それとこの可愛らしい我が子の黄蝶と花蝶の事もな……」 葉狐様の部屋へ通され、中に一歩踏み入れるなり――魄の目に飛び込んできたのは壁一面に描かれている赤と白の椿の豪華絢爛な絵画と中央部分におしとやかに座り黄金の扇子をはためかせている葉狐様の姿___そして、その両側には正座をして座りながら興味深そうに来訪者である己をまじ、まじと見つめてくる二人の少女がいる光景だった。 少女の格好をしている葉狐様の両脇にいる彼らの事は知っている―――。王花様と血が繋がっている双子の弟君だ。 (黄蝶様と__花蝶様……随分と久方ぶりだ――とはいえ彼らとは初対面な訳ではないし驚きは少ない――しかし……まさか、以前会った時は小さな赤ん坊だった薊の子が……あのように立派に成長しているとは……っ……しかも……) 「狐のお兄さん……狐お兄さん――も……こちらに、お呼ばれされていたのですか!?」 「小僧よ…………鬱陶しいぞ」 何故、どちらかといえば人見知りが激しい尹儒が、あのように珀王と呼ばれた薊の子に仲が良さそうに無防備に抱き付いているのかが――魄にはどうしても理解出来ず得たいの知れないもやもやした気持ちに心の中を支配されてしまう。 ―――すると、 「母上、母上―――どうしたのですか__怖い顔をしていますよ?」 「…………えっ……あ……っ……な、何でもないのです……何でも……っ……」 そう言いながら、魄は___心配する我が子の体を持ち上げようとした。すると、その時―――ふいにくらっと目眩を起こしてしまい、思わず前のめりに倒れそうになってしまう―――が、 「…………っ……!?」 「……あ、ありがとうございます……っ……」 立派に成長しきり体格ががっしりとしている薊の子供――珀王の逞しい両腕に支えられ、何とか前のめりに倒れる事もなく、ほっと胸を撫で下ろして安堵しつつも支えてくれた彼へお礼を言うために見上げる。 カランッ………… すると、その拍子に――狐面が床へと落ちてしまうのだった。

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