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第11話
※ ※ ※
その後、妃宮を後にした私はすっかり寝付いてしまった尹儒を背中におぶさりながら中庭へと来ていた。この王宮内に吹き荒れる事件の元凶であった【始まりの場】であると同時に―――母と父の魂を奪った【終わりの場】ともいえる王宮内の桜の木の下で目を閉じつつ、先ほどの悪意のある葉狐様の言葉を心の中で反復し続けていた。
(王宮の桜よ……おまえは―――私から王花様の心
そして父と母の魂を奪うだけでなく……燗喩殿の私に対する想いさえ奪うつもりなのか……っ……)
まるで、私の心の中での問いかけに答えるかのように一陣の風が吹き―――辺りに葉っぱが舞い落ちる。
ギィ……ギィ……ッ……
嫌な音が聞こえてきた気がした―――。
毎夜、苛まれる悪夢の中で聞き慣れてしまっている何かが軋むような音が、とうとう夢の中だけでなく現実でさえも聞こえてきたような気がした魄はおそるおそる上を見上げてしまう。
(あ、足だ……あの日―――私が見た……首を吊って絶命した父と母の足が……見え……っ……)
目の前が靄がかったかのように真っ白になり、強いめまいを起こしてしまった魄は―――そのまま地面へと倒れそうになる。
しかし―――、
「……っ…………か、燗喩……殿……っ……ずっと―――お待ちして……参りました……」
「―――今宵は……月が綺麗やな……麗しの王妃様?」
地面に倒れそうになっていた自分の体を支えたのが、永遠の愛を誓った燗喩ではなく魔千寿だとも知る由もなく身も心も疲弊した魄は口元を醜悪に歪めながら笑みを浮かべる魔千寿の腕に抱きかかえられ―――すやすやと眠りの世界に誘われている尹儒共々どこかへと連れて行かれるのだった。
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