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第40話

「貴様は愚生の好みの童子では無き、無き。しかも、あろうことか生者如きが愚生の邪魔をしようとは……っ__その罪、万死に値しようぞ……今、ここで喰うてやろう」 【蛇之・愚生】が尚も珀王の首をぎりぎりと締めあげていく。周りの者達は助けてくれない、と悟った尹儒は恐怖と不安から溢れ出てきそうになる涙をぐっと堪えながら震える足を無理やり動かすと、ぎゅっ――と【蛇之・愚生】が身に付けている襤褸の裾を握り、強めに引っ張った。 「や……っ……止めて、止めてください……狐のおにいちゃんから離れて……っ……!!あなたの望みを叶えます。だから、狐のおにいちゃんに……何もしないで……っ……」 消え入りそうなほどに儚い尹儒の言葉を聞いて、ようやく【蛇之・愚生】は珀王の首を締め上げる動作をぴたりと止める。そして、尹儒を見下ろしながら不安さが明らかに滲み出ている弱気そうな瞳をじろりと鋭い目付きで睨み付けるのだ。 その後、しばらくは何かを考えているかの如く無言の状態だった。しかし、ふいに【蛇之・愚生】は壁に抑えつけていた珀王を解放すると口角をあげつつ細く長い舌で再び尹儒の頬をぺろりと舐め上げる。 「……ひっ…………」 先程と同様に、悲鳴をあげたものの尹儒は逃げようとせずに【蛇之・愚生】の蛇の顔をまっすぐと見据えた。もちろん、足はがくがくと震えていたが――それでも逃げようとしなかったのは、己が逃げようとすることで珀王に危害が加わらないためだ。 「さて、御託はこの辺にしておいて……愚生らは、お愉しみの時といこうかの。水を弾くほどに弾力のある童子の肌を堪能するとしようか……貴様も共に来るか?この、《ゆんじゅ》とやらの生者のはしたなき様を――貴様も見たいのであろう?」 「な……っ__な、何を言ってるんだ、この化け物……っ……!!だいいち、俺は……そ、そんな餓鬼の肌を見たところで――何とも思わねえよ」 「ほう、何とも思わぬか……なれば、この様を見ても__貴様は何とも思わぬというのだな?」 蛇頭の【蛇之・愚生】は小さな黒き瞳を更に細め、意地悪く微笑みながら真っ赤に顔を染める珀王へと言い放つと、そのまま尹儒の胸元をはだけさせ露になった桃色の乳頭を尚も動揺しながら耳まで真っ赤に染めつつ必死でそっぽを向こうとしていた珀王へと見せつける。 「こ、こしょばゆい……よう……嫌だ……狐のおにいちゃん……そんなに――見ないで……っ……あっ……んっ……」 ぷっくりと膨れた桃色の乳頭を指の腹でぐりぐりと触られ、最初こそくすぐったがっていた尹儒だったが――それも、【蛇之・愚生】が調子をこいて赤く細い舌で舐め上げるまでだった。 単なるくすぐったさから、熱を帯び快感へと変化していくのに然程時間はかからず、尹儒の体に__ある兆しをもたらしたのだ。 下半身がどうしようもなく、どくどくと脈うち――尚且つ、顔が珀王に負けず劣らず赤くなっていて、まるで酒を飲んだかの如くぼうっとしている。 「お、おにいちゃん……か、体が……っ_変になっちゃった……尹儒のこと……なおして……っ……んっ……やっ……」 「ば、馬鹿なことを言ってんじゃねえよ……っ__大体、俺じゃなく……その変な化け物になおして貰えばいいだろ……っ……」 素直になれない珀王は、そっぽを向きつつ――ぶっきらぼうに素っ気なく尹儒へと言い放つ。本心とは正反対の言葉を投げ掛けていると分かってはいるものの、どうしても尹儒へ意地悪な言葉を投げ掛けてしまう己に対して珀王は心の片隅で自己嫌悪を抱くのだ。 「善き、善き……連れから了承も得たことだし……これから甘い一時を過ごすとするかの。さあ、此方を進んだ先にある愚生の寝所へ来るがいい……めんこい、童子よ」 ぐいっ__と胸元がはだけたままの尹儒の腕をとり、逆ノ目郭にとって金をおとす上客であるが故に何も言えず案山子の如く突っ立ったままの【女将】や【新月・鬼灯花魁】【女白・金魚草】のすぐ脇を鼻歌交わりで通り過ぎようとする【蛇之・愚生】なのだった。

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