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第45話*

 倫が困ったような顔をしながら、稜而をベッドの上に押し倒した。 「稜而みたいにできるかな?」  倫は自分の唇をぺろりと舐めて笑う。稜而と舌を絡めるキスを交わし、頬にキスをして、耳の形を舌先で辿る。さらには舌先を耳の奥まで差し込んで動かした。がさごそと大きなノイズが聞こえる。 「うわっ」  逃げ場がなく耐えるうちに、くすぐったさが甘い疼きに変化した。舌が抜けると入れ替わりに倫の甘い溜め息が吹き込まれて、ますます雄蕊は熱を持った。 「倫……」 呟くよう自分の声は熱っぽい。 「エロい声」  倫は嬉しそうに笑うと、稜而への愛撫を再開する。首筋をねろりと舌で辿られ、鎖骨の上で痛いほどきつく吸われて、軽い痛みと共に赤い跡が残った。  どの刺激も少しずつ下腹部へ熱を送る。  乳暈を口で包まれ、舌先で乳首をなぶられると、もやもやと変な感覚が沸き起こってきた。 「ん……」 泣きたいような気持ちになって倫の頭を押し留める。 「悲しい感じになるから、やめて」 倫は頷くとそれ以上のことはせず、ゆっくり腹を辿って、稜而の雄蕊に辿り着いた。  まだ柔らかさが残るものを指でつまみ、腹から引き剥がされて、口に含まれる。 「うわっ!」 反射的に全身が跳ねた。ぬめぬめと柔らかく、熱く、一気に血液が流れ込んでいくのを感じる。思わず手の甲で目を覆った。 「リラックスして」  無意識の律動を窘められて、稜而は全身をベッドに投げ出したまま、倫の口淫を受けた。  敏感に張り詰めた薄い皮膚を粘膜でぬるぬると擦られる。手淫のような乱暴さがなく、焚き火にあたるような熱と、冷えた身体を浴槽に沈めるような痺れ、そして見下ろせば倫が口を窄めて含んでくれている光景。  伏せている睫毛の長さ、含み切れない根元に添えられている細い指、すべてが刺激となって襲い来て、稜而は酸素を求めて呼吸を早めた。  暴発しそうと目を閉じたとき、倫は口を外した。外気に晒されて、一気に静まる。 「初めては、僕の中でいく約束だよ」 「う、うん」 稜而が目を開けると、倫はローションのボトルへ手を伸ばしていた。 「俺がやるよ」 起き上がって、倫の背後に回り込んだ。  四つん這いから崩れ、肩をついた倫の手で左右に広げられた蕾は、ココア色をしていた。  ぼやけた写真でしか知らない場所に、稜而はそっと指を触れた。ひくひくと蠢く場所に不思議な魅力を感じて、何度か指の腹をあて、それから思い出してローションを指先にのせて、塗りつけた。 「ええと、ローションはケチらない。たっぷりと使う。少しずつマッサージして、指が二本入るまで」 頭に叩き込んだ内容を無意識に呟きながら、円を描くように撫で、指先をほんの数ミリ突き立ててみようとした。まったく余地がなくて、稜而は腹を据えてマッサージに取り掛かる。  ようやく柔らかくなったと踏んで指先を突き立てた。 「んがっ!」  倫の呻き声に慌てた。 「ご、ごめん!」 「脳味噌まで指を突っ込まれたかと思った……」 「ごめん……」 蕾は固く、倫は痛がっていて、稜而はうなだれた。 「大丈夫。稜而、仰向けに寝て」 倫の甘い声にあやされて、稜而は素直に仰向けになった。 稜而の雄蕊はすっかりしぼみ、ただ身体の大きな少年のようになって、腰を跨いだ倫の姿を眺めていた。 「エッチな気持ち、なくなっちゃった?」  すっと首を傾げられて、それだけで稜而の雄蕊は力を取り戻す。  倫は妖艶に微笑んで、稜而の雄蕊に薄膜をかぶせ、とろとろとローションを垂らした。 「ふふ。冷たい?」 手のひらに包んで塗り広げ、余った分を自分の後孔へ塗り込めると、倫は稜而の屹立の上にゆっくり身体を沈め始めた。 「ん……。稜而っ」 倫は眉間に皺を寄せ、下唇を噛んで、後ろ手に稜而の蕊を握ったまま、焦れったそうにまだ固い蕾を擦りつける。 「倫、焦らないで」  稜而の声が聞こえているのかどうか、ただ何度も手のひらに包んでいる稜而の蕊を扱きあげ、顎を上げて泣きそうな顔をしながら自分の窄まりに先端をあてがい、つるりと逃げては焦れるのをくり返していた。 「倫……」 「急かさないでっ!」 「急かしてない。無理するなって」  稜而が倫を抱き締めようと上体を起こしたとき、倫はあっと声を上げ、するんっと稜而の雄蕊を根元まで飲み込んだ。 「え?」 「え?」 ふたりは目を丸くして顔を見合わせ、それから同時に声を上げて笑った。

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