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第46話*
稜而はゆっくり息を逃し、倫の身体を抱き締めた。
「倫」
「本当に一つになっちゃったね。大好き」
倫は稜而の肩に額を擦りつけた。ずずっと洟を啜る音が聞こえ、肩が震えているのに気づき、稜而は慌てて身体を離した。
「痛い?」
「痛い……けど、そうじゃなくて。嬉しくて。ずっと稜而とこうしたかったから。大好き。大好き……」
腕の内側を交互に目に当てて擦り上げて、倫は笑った。
稜而はこみ上げる気持ちのままに倫を抱き締めた。
「ねぇ、稜而。続き……しよ……?」
倫がぎこちなく腰を揺らめかせた。稜而も頷き、少しずつ突き上げるように腰を動かした。わずかな揺らぎにも関わらず、つなぎ目からは甘痒い熱が広がり、稜而の眉間には皺が刻まれ、息が上がった。
「りょう……じ……」
縋り付いてくる身体を抱いて、稜而は快楽に耐えた。
「自分勝手になりそうだ……っ」
「僕は平気。慣れたから」
倫ははにかむように笑い、稜而はその表情にローションのボトルを掴んだ。倫の茎の上で握りしめ、ありったけを絞り出す。
「倫も絶対に気持ちよくならなきゃダメだ」
手のひらに包んで扱くと、倫は顎を上げた。
「あっ、やっ、ん、稜而……っ」
腰が引けそうになる倫の身体を抱え、倫を爆ぜさせようと手首が怠くなるのも構わずなぶり、露出している先端を指の腹で捏ねた。
「稜而。はっ、あ……、ヤバい……っ、むずむずする。んっ」
さっきは口で犯していて見えなかった顔がはっきり見える。頬がのぼせたように赤くなり、悩ましげに眉はひそめられ、酸素を求めて口が開く。顔の上半分に意識が集中し始めて下顎が落ち、赤い舌が見えた。
倫が高まっていく姿に稜而は強い興奮を覚えた。
「気持ちいい? ねぇ、倫っ。気持ちいい?」
上擦った声で問いかけながら、いつの間にか腰を揺らしていた。
「んっ、きもちい……っ。稜而っ。りょうじも、りょうじも……して。一緒にっ」
「うん。俺もっ」
稜而は歯を食いしばって倫の身体を突き上げ続けた。熱と摩擦で腰が溶けそうだと思った。
言葉を紡ぐ余裕は消え失せ、断続的に上がる倫の甘い声が神経毒のように稜而の身体を駆けめぐる。
稜而は甘く疼く快感の虜になって倫の粘膜へ己を擦りつけ続けた。急な坂を駆け上がるような苦しさなのに、その先の快感をおぼろげながら知る身は疾走を止めなかった。
「りょうじ……っ」
一足早く倫が爆ぜて、稜而の腹に温かい粘液がかかり、締め上げられた衝撃で稜而も爆ぜた。
目の前に白い光が散って、気づいたときには倫が崩れ落ちかかっていて、慌てて抱き留めてベッドに寝かせた。バスタオルで二人のぬめりを拭い取って、稜而も倦怠感に引きずられるようにしてベッドへ倒れ込んだ。
倫が布団を掛けてくれて、一緒に包まる。ふざけて頭の上まで引き上げたら、秘密基地の中にいるような楽しさが湧きあがって一緒に笑った。
「稜而。僕たち大人になっちゃったね」
「うん」
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