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第3話

「はぁ……」  何とも、言えない気持ちが抑えられず、陣内は朝の仕事を終えた。支給された弁当を受け取りに行き、別の場所で講演会を補佐をしていた柚木の姿を探す。  休憩に。と大学側からあてがわれた部屋は広かったが、柚木は男の割に色素の薄い、綺麗なこげ茶色の地毛をしている。  だから、嫌でも目立っていた。 「ああ、ジン。今日はギリギリだったけど、何かあったの?」  柚木の指摘通り、何とか、バイトには間にあった。しかも、あのタクシーで相乗りした男はここの准教授だったそうだ。しかも、ただの准教授ではなく、将来も期待されているという。  しかも、タクシー代は全て、その教授持ちだったため、陣内は軽い罪悪感にかられていた。 「実はな……」  陣内は今朝のタクシーのくだりから一部始終を話した。話は大して長いものではないが、白飯、鮭の切り身、コロッケと弁当のおかずが1つ、また、1つとなくなっていくため、長くかかってしまったような気がする。 「ふーん、あの先生がね」 「あ、何か知っているのか?」  今まで忘れかけてはいたが、考えてみれば、柚木はこの大学の学生である。  何かを知っているのであれば、この申し訳ない気持ちをなくすために何かできるかも知れない。 「うーん、一通りはどんな先生でも色んな噂は聞くからね。例えば、どんな事が知りたいの?」 「えーと、そうだな。あ、とりあえず、名前! 名前、教えてもらえると助かる。タクシーの中でも何も話さなくてな」 「オッケー。名前は逢坂章久(あいさかあきひさ)。担当は心理学部人間心理学科の准教授。年齢は確か、僕達より6歳上だったかな?」 「お前はどこの検索サイトかって……まぁ、良いか。6歳上って事は27、8か……。そんなに若くても、准教授ってなれるものなのか?」 「さぁ? ただ、研究分野も広い上に内容も深い。あと、講義も明解で、既に論文も幾つか認められているから分からなくはないね」

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