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第17話(R18)
翌朝、陣内は重い身体を起こした。目覚めるという事はできたが、それから先はできなかった。
周りを見渡すと、カーテンは黄色みを帯びていない事から曇っているのだろう。
鳥の声。車の音。聞こえてくる音からして雨は降っていないようだった。
「なんで、あんな事……」
あれから、どうやって帰ってきたのかは疑わしかったが、おそやく、陣内は自力で帰ってきたのだろう。
そして、スラックスをのろのろと脱ぐ。下着は湿っていて、いつもより重くなった性器が目に飛び込んだ。いつものように、いや、もしかしたら、手に思うように力が入らないから、半ばやけくそに強くペニスを扱いた。
あのまま、逢坂に縋っていたら、自分はどうなっていたか分からない。
仮に、その場は良くても、だ。きっと陣内はこの先、自分自身を受け入れる事はできない。
「どうして……」
陣内はそう呟いて、口を噤んだ。
身体のだるさもある。ただ、解決もできないのに、色んな思いに振り回され、色んな感情が生まれるのは嫌だった。
「もう忘れた方が良い……」
忘れた方が良い。
しかし、大体はそんな事を言ってしまっている時点で、それは深く意識しているという事である。それが叶わないのだと思う。
しかも、そんな陣内に追い討ちをかけるようにスマートフォンの画面にはある人の名前が表示されてしまった。
『逢坂章久』。
5回程コールされたが、陣内が応答のマークにも着信拒否のマークにも触れないでいると、ディスプレイに表示された名前も暫くして消えた。
いっその事、昨日の時点で着信拒否に設定しておいた方が良かったのだろうか。
ただ、それはもう過ぎてしまった事だった。
少し時間が経ったところで、陣内はおそるおそる、逢坂の留守電のメッセージを聞いてみることにした。
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