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第18話
「ごめん、ごめん」
暫くして、流れてきた逢坂の声だった。
当然、陣内は逢坂のメッセージを無視する事はできた。しかし、何かざわざわとした気持ちが陣内を襲う。
そして、陣内は入っている内容に耳を澄ました。
「じゃあ、君の家に着く前に少し考えてみようか? その面倒な理由をさ」
「え?」
聞こえてきた逢坂の声に間違いなかった。
しかし、様子がおかしい。そして、時折、陣内自身の声が混じっている。
陣内にはこれらのやりとりには聞き覚えがあった。
「これって昨日の……」
今、考えてみると、あの煙草を取り出そうとするような動作は録音機のスイッチを押すためだったのではないだろうか。
陣内は「油断した」と思った。
他の人間ならともかく、逢坂は人間の心理を専門とする研究者だ。用途までは特定はできかねないが、相談者の言葉を録音したり、あるいは、勉強会で使ったりとそれを持っていても、自然なように思えた。
「どうすれば、良いんだろうな……」
電話のメッセージは数秒もすると、切れるようになっているので、あの逢坂に押し倒されて、されるがままにされた時の音声は入ってはいなかった。
だが、逢坂の録音機には確実に残っているだろう。
あの陣内の痴態や情けない声。それを考えると、陣内がとれる行動は限られる気がした。
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