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第3話 ~惑わされて現実に編~

友人の慎の兄である真生。 そう…。兄だ。 特に交流も無く、はじめましての関係である。 そんな真生が、何故か自分にべったりとくっついている。 男だ…。この人は男ーっ‼ そう心の中で言い聞かせるものの…。 「ん~。これ、美味しいよ?」 真生は手土産として持参したお菓子を早速開けていた。 モグモグモグ。ゴクン。 あるかないかの喉仏が上下した。 それから肩に寄りかかり、その小さな顔で蒼真を見上げてくる。 ちょっと、え?この人…わざとか⁉ 見上げてくるそのぱっちりとした目は、つけまつげでもしているのか?と、疑いたくなる位にバッサバサ。 黒目がちの瞳は、気のせいか潤んでいる。 ウルウルさせながら自分を見上げてくるのだから、免疫の無い蒼真は生唾ゴックンだ。 「食べる?」 真生が自分の食べかけを差し出しながら小首を傾げた。 ぐっ…! ふざけんな、このヤロウ‼ 俺の理性を試してるのか…⁉ その圧倒的な破壊力は、比較的冷静な蒼真の内面を荒立たせるには充分で…。 食ってやる! その指先ごと、食ってやる‼ パクッ。 「…え」 蒼真の口から間抜けな声が漏れた。 モグモグモグ 「食べないなんてもったいないな~。美味しいのに」 お菓子どころか、指先まで口に含んでやろうと思っていた蒼真の前で真生は指を引っ込めて自分で食べてしまったのだ。 真生の赤くて濡れた様な魅惑的な小さな唇が動いて、お菓子を咀嚼している。 「…俺も…」 欲しかったのに。 あんたの綺麗な指から直接貰いたかった…。 なんて、言えない。 蒼真は真生の顔を斜め上から見下ろしつつ、ヒクヒクと苦笑いするしかなかった。 クスッ。 真生が笑った。 「まだあるから、そんな顔しないで…ほら」 真生が病的に白くて綺麗な指で、お菓子を摘まむ。 「ほら、あーん…」 いざとなると、こっぱずかしくて口など開けられない。 蒼真は顔を引いて戸惑う。 「ほら。あーんしてごらん…?」 その表情がヤバイ。 半開きの唇が、ヤバイ‼ 真生が唇を仔猫の様な舌でペロリと舐めた。 「ふふふ」 蒼真は釣られる様に、口を開けた。 真生が、ゆっくりと指を近づけてくる。 「あーん」 あーん。 とうとう蒼真が真生の持つお菓子を食べようとした瞬間。 ガチャッ。 「…」 「…あ」 慎がドアを開けて立ち尽くしていた。 口を「あ」の形にしたまま。 部屋の中では友人に兄がしなだれ掛かっている。 そして、お菓子を「あーん」して貰っていた。 「邪魔したな」 …パタン。 静かに閉まるドアによって、現実に引き戻された蒼真なのだった。

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