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アレクの夢

優しい香りに包まれて、アレクは夢を見ていた。 …王都に来た時のことを。 「アレク。 長旅で疲れたでしょう? さ、僕の膝においで」 「へう…?」 「あ、今、人見知り真っ最中で…」 差し出された手に、アレクは手を乗せる。 「ふふ…。 ちいさな手だねぇ…。 紅葉みたいでかわいい…」 「えうう…?」 そうっと膝に乗せてもらい、真っ白い流れに指を絡ませる。 「アレク、そんなに引っ張ったら…」 「大丈夫だよ、全然痛くない。ねぇ?アレク」 「えうう」 見上げると、きれいな宝石のような輝きがあった。 「………っ!」 夕焼けと、宵闇の色。 初めて見る色合いの瞳と顔。 なのに、とても懐かしい気がした。 「あー……」 「アルフリート。僕はアルフリートだよ。 よろしくね、アレク」 「あー…、ありゅ…」 「アルフリート」 「ありゅ……。……り…ぃ?」 「ふふ…。お母さんとおんなじだね。 君も僕をリィって呼ぶの?」 「り…ぃ…。りぃ…!」 「うん。僕はリィ。よろしくね、アレク」 「えう~!」 「僕の家に来る?」 「えう~!」 その頃、アレクは夜泣きと人見知りが酷かったはずなのに、初めて会うアルフリートには直ぐになついた。 不思議なくらいに。 上級文官の官舎は、思ったより広かった。 でも、半年も経たずに三人で再び引っ越すことになる。 青珊瑚商店街にあった大網元の屋敷を、アルフリートが買い取ったからだ…。

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