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斜向かいの建物にアレクは駆け込もうとしたのだが、ドアは開かなかった。 「え…」 診察はとうに終わっている。 裏口も施錠されていて、アレクは途方にくれた。 ヘタリとその場に座り込みかけ、思い直してすっくと立つ。 「ダメダメダメ!おいら、にいちゃんになるんだ! こんなことじゃダメじゃないか!」 診察を終えた先生が足を向ける場所は限られている。 煮込みが美味い居酒屋か、まったり気ままに飲める角打ち。 あとは、薬草を仕入れに薬局あたりだ。 心当たりを当たりながら、近所のおばちゃんたちにも聞いて回る。 「えっ、アルフリートが?」 「いつもと違って、ぐあい悪いみたいなんだ!」 「ありゃ大変!わたしらも探すよ!」 「あんた!世話役さんに連絡しとくれ! リカルドが帰ってくるまで入り口をかためてやらないと!」 「おう、任せとけ。 お前ら行くぞ!」 「おう!」 いつもは症状も軽そうにしていたが、具合が悪いとなれば話は別だ。 伴侶の定まっていない者の発情の場合、その発情香は伴侶のいない者を誰彼なく誘ってしまう。 アルフリートが誰を想っているかは分かっているが、肝心の相手が踏ん切れるか…。 「踏ん切ってもらわなきゃ、どうにもなんないな!」 「そうだね」 「いい子だよ、あの子は。 遠慮して隠してるだけじゃダメなんだよね」 「アレクはあたしが預かるよ。 うちの坊主と仲いいし、さ」 「リカルドが来たら、発破かけてやんなきゃ」 「うん!」 発破をかける前にやることは沢山ある。 若い者が迂闊に近づかないようにし、症状が楽になる薬湯を煮出す。 片手で摘まめそうな食べ物も用意しなければ。 大人たちは直ぐ様駆け出した。

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