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[後日談]3

激しいセックスを終えて、二人は裸体のままベッドでだらだらと過ごしていた。 腹が減ればルシアンが食事を運び、互いに手掴みで食べた。 ルシアンがノアに肉を差し出せば、ノアは素直にルシアンの手から肉を食べて、脂でギトギトのルシアンの指まで舐めしゃぶった。 美しい銀色の豹のようなその姿にルシアンはゾクリとした。野生の獣がようやく自分に懐いたような錯覚を起こしそうになる。 だが、この獣は性悪だ。下心があるはずだ。 「急にどうした? お前はそんな従順なタマじゃないだろう」 「気に入らない? なら、あんたにはもうしない。ザカライアと楽しむことにするよ」 ルシアンはきつくノアの腕を掴んだ。 「今は奴の名を出すな」 「あんた……どうしてほしいわけ? 抵抗すればいいの? もう疲れたんだよ。どうせ俺は死なないし、歳も取らないんだろ。だったら、気持ちいい方がいい。それって悪いこと?」 「……いや、悪くはない」 ルシアンはまだ納得がいっていないようだったが、ノアに口移しでワインを飲まされて、そのまま濃厚な口付けに酔い痴れた。 「こうやってダラダラ過ごす方が俺には向いてる。ザカライアは口うるさいから」 ノアがため息をついてぼやいた。ザカライアは「あれでも天使だからな」と笑った。 「ねぇ、天使の苦手なもの……弱点ってなに?」 「苦手なのは悪魔だ。本来なら俺と暮らすのもストレスなはずだぞ。お前を共有する為に我慢してるんだ」 「優等生なんだか、バカなんだか分かんねぇな。ザカライアは」 ノアの言葉にルシアンはまた笑う。 「ああ。あとは翼だな。純白の翼は天使の証だ。その美しさで階級が決まる。翼を傷付けられると回復に時間がかかるから、戦の時は何匹もの天使の翼を引きちぎってやった」 ルシアンが残酷な笑みを浮かべたので、ノアは内心ゾクリとしたが表情には出さないようにした。 「へぇ。ザカライアの翼も引っこ抜いてやればいいのに」 「……怖いな。お前がそんな事を言うとはな」 ルシアンは射抜くようにノアを見た。 「嫌い?」 ノアは負けじと冷たいオッドアイでルシアンを見た。 「いや、たまらない。残酷なお前が好きなんだ。ノア、愛してる」 欲に掠れた声で告げて、再びノアをベッドに押し倒した。  ザカライアは館に戻ってきて、散らかった部屋を見てイラついたようにルシアンに説教をしていた。 魔力を使って元通りにできるくせに、寝室だけでなくリビングやキッチンにも情交の跡が残っていたからだ。 ザカライアが口うるさいのも、ルシアンが横柄なのも、いつも通りだが……二人の間には小さな亀裂が走っていた。 ノアの成長を止めた今、二人で共有する必要性を疑い始めていた。   ノアは自分の方を求めている。互いにそう考えていた。もちろん、そう思い込むように仕向けたのはノアなのだが。 ノアはか弱い人間ではない。 魂はハーフブリードのノアのままなのだから。

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