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鏡と美少年

目覚めてから一週間後。 体の違和感が少しずつマシになってきた。 とはいえ、わずかに体は動かせても、相変わらずベッドから起き上がることは出来ないし喋れないけど。 先生が言うには、あの日───小林んちでフランケンシュタイナーに衝撃を受けた帰り道、俺は事故にあったらしい。 「君は通りの反対側で酔っ払いに絡まれてるOLさんを助けようとして、道路を渡って……」 ───車に跳ねられたのか!? 「渡りきって、酔っ払いに4~5発、いや10発だったかな? 殴られたけど、OLさんを酔っ払いのセクハラから助けたんだ」 ───10発も殴られたのかよ! いや、OLさん助けれて良かったけど。 「その後、路地裏で三人の不良にカツアゲされている中学生を助けようとして……」 ───不良に刺されたとか!? 「ボコボコにされて、君の財布からお金を奪われたけど、中学生をカツアゲから助けたんだ」 ───俺がカツアゲされたのかよ!! まぁ、中学生が無事で良かったけど。 「それから、歩きスマホで信号無視していた女子大生が車に跳ねられそうになっていたのを……」 ───今度こそ跳ねられたのか!? 「満身創痍の体で華麗に救ったんだ。 君はダイハードのブルースウィリスみたいだったらしい」 ───俺、カッコイイ!! 「その女子大生はとても可愛い子でね。 お礼がしたいと君の名前を聞いたんだけど、君は照れながら『イイっす。イイっす』と言って道路を渡ろうとして……」 ───まさか…… 「酔っ払い運転の車に跳ねられたんだ」 ───マジか!! 最後の最後でか! 「君に助けられた人たちから聞いたんだ。 三人とも病院に来て、泣きながら、『彼は恩人だ。助けてくれ』と縋られたよ」 俺は胸がジーンとした。 とゆうか、一瞬でその可愛い女子大生とお付き合いするところまで想像した。 「だが、君の体はズタボロで……手の施しようが無かった。無事だったのは脳だけだった」 ───えっ。 「落ち着いてね。今の君を見せるよ」 先生は神妙な顔付きで、俺に鏡を向けた。 「……だ……れ……?」 おお、目覚めてはじめて声が出た。 それくらい意味不明なものが映っていたからだ。 ───鏡には色白で華奢な美少年が映っていた。

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