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小林と千尋2

俺は山田太郎が住んでいたマンションへと向かった。 有栖川邸は全然知らないお屋敷だけど、山田宅は最寄り駅も道順も、近所のコンビニも全部覚えてる。 ───俺の部屋は、506号室。 郵便受けには、「村井繁」という名前が貼り付けられていた。 「……だよなぁ。半年経ってるもんな」 そのまま小林の家に方向転換した。行ってどうするんだ? もう俺は山田太郎じゃないってのに。 小林のマンションの前まで来て、俺はポツネンと立ち尽くす。 どれくらいそうしていたか分からないけど……今、マンションのエントランスから出てきたのは ───小林!! 眼鏡の仏頂面。背が高く、無造作に髪を括っている。そして隠れイケメンだ。 ふと、小林がこっちを見た。 ───小林! 俺だよ!! 山田!! 生きてたんだ!! びっくりしたか!? ……などと言える訳もなく。 黙って立ってたら、小林は興味無さげに俺の横を通り過ぎていく。 小林。小林! 俺だってば。 俺……本当は全然大丈夫じゃないんだよ。 小林……!! 小林が通り過ぎていっても、俺は動くことができなくて、マンションの前で立ち尽くしていた。

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