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小林と千尋3
「君、大丈夫?」
───!?
振り返ると、小林が俺を心配そうに見ていた。
ちょっと迷ったような顔をしてから、すっとハンカチを差し出された。
俺ってば、ボッロボロに泣いてたみたい。
───小林……!!
思い出した。小林は他人に恐ろしいくらい無関心な男のはずだ。
何故か俺とはしょっちゅう連んでいて、「もうちょい愛想良くすればいいのに」とか「飲み会参加しろよ。友達作れよ」とか忠告してみても
「人付き合いは煩わしい。俺は山田だけで充分だ」と言われていたんだった。
そんな小林が、見ず知らずのガキにハンカチ差し出すなど奇跡に等しい。
俺は泣き濡れた瞳で小林を見た。
小林はなぜだかハッとした顔をしている。
勝手な思い込みだけど、小林の瞳の中に山田太郎が映っている気がした。
あの夜……最後の夜のフランケンシュタイナーを見ていた小林の言葉を思い出す。
───苦痛や困難だと分かった上で、それでも受けて立つ。
「……ありがとう」
小林。ありがとう。
声に出さずに名を呼ぶ。
「……君……!?」
俺の身に起こったトンデモない出来事。
これからやり直す人生はハードモードだと思う。
それでも……
受けてたとうじゃないか。
山田太郎最後の夜の、あの時の熱さが再び俺の胸に戻ってきた。
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