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小林と千尋 [side小林]

[side 小林] 山田が死んで、半年。 俺の胸にぽっかり空いた穴は一向に埋まる事はない。たぶん、一生埋まらないだろう。 ある日突然「小林~!」と、山田が駆け込んでくるような気がするが…… ───もう二度と山田は来ない。 俺はただ淡々と毎日を過ごしていた。 その日、マンションを出たところで一人の少年と出会った。 随分と綺麗な顔立ちした、色が白くて華奢な美少年だった。 物言いたげにこちらを見ていたが素通りする。 だけど、通り過ぎた瞬間───「小林!!」と、名前を呼ばれた気がした。 山田!? 振り返ると少年は細い肩を震わせて泣いているようだった。 「君、大丈夫?」 思わず声をかけると、驚いた表情で俺を見た。 「ありがとう」 その言葉にハッとする。 『ありがとう。小林。ありがとう!』 最後の夜の山田を思い出した。 この美少年と山田は似ても似つかない。 姿形は全く違うのに。 ───山田? 心の中でだけ、山田の名を呼ぶ。 すると、その呼び掛けが聞こえたかのように、美少年は泣き濡れた瞳でニコリと微笑んだ。

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