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千尋と男子校2
「こっちがお前の部屋だ。荷物は部屋の中に置いてるから、荷解き手伝うよ」
「助かります。ありがとうございます」
良かった! 気のイイ先輩で。
内心、ジャイアンみたいな奴だったらどうしようかと思ったし。
俺は高槻先輩と一緒に和気あいあいと荷解きをした。あらかた片付いたときには、そこそこ遅い時間になっていた。
「ちょっと遅くなったけど、飯行こうか」
「はい! ハラペコっす」
「ついてる」
高槻先輩がおかしそうに笑って、俺の鼻の頭についてた綿埃を指先でちょんと取った。
「あ、すいません」
二ヘラっと笑うと、高槻先輩はなんだかきょとんとした顔をした。
「お前って……」
「?」
「いや。何でもない。食堂行こうか」
「はい」
俺は高槻先輩に、寮の横にある食堂に連れていってもらった。
こちらもまたキレイな建物ですこと。
「いやいやいや。食堂ってゆうよりオシャレなレストランじゃないですか」
ほんとにそう。カルチャーショックだわ~。
男子校と学生寮と食堂のイメージ変わったわ。
「どんなのだと思ってたんだ?」
「頭にカーラー巻いた割烹着のおばちゃんが焼き魚定食とか作ってくれるイメージでした」
高槻先輩がアハハと男らしく笑う。
「お前。いつの時代のコントだよ」
「だって……はぅあ!!」
「ど、どうした!?」
「俺、財布忘れてきちゃいました」
「ああ。財布はいらないんだよ。学園内ではIDカードで全部済ませて、翌月一括で引き落とされるから。有栖川はまだIDもらってないだろ。今日は俺のおごりだ」
俺はまた深々と頭を下げる。(何回、先輩に頭下げるんだって感じだけど。悲しいかな社畜のクセで)
その俺の頭を高槻先輩がくしゃりと撫でる。
「いいから。好きなもん頼めよ」
「はい」
俺はニッコリ笑って、お言葉に甘えさせてもらう。
不安の方が大きかったけど、良かった。
同室が面倒見のいい、優しい先輩で。
明日からの二度目の高校生活も何とかなる気がしてきた。
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