31 / 306

千尋と放課後2

  校舎から寮まで、高槻先輩と並んで歩く。 ちらちらと、下校中の生徒達がこっちを見てる。俺も、ちらっと高槻先輩を見た。 ……風紀の鬼。仏の顔が一個だけって。 そんなに怖そうに見えないけどなぁ。 あんた1仏陀なんすか? なんて、本人に聞いてみたいけど、さすがにそれはな~。 「今日、保健室に行ったんだって? 体調は大丈夫か?」 「え?ああ。大丈夫です。ただ……」 ハッ! ただ眠かっただけ、なんて言ったら、ヤバいよな!? 「ただ?」 「初日だし、緊張して疲れちゃったみたいで」 えへへと笑って、ごまかした。 「無理はするなよ」 高槻先輩は心配そうに言った。 やっぱり、後輩想いのいい人だよなぁ。 人の噂なんか、聞くもんじゃないって。 「高槻先輩、ありがとうございます」 「……」 ニカッと笑うと、高槻先輩はちょっとだけ驚いたみたいな顔をして、ふいと前を向いた。 「……いや」 一緒に寮の部屋に戻ったんだけど、高槻先輩は風紀のお仕事があるからって、また校舎に戻っていった。 俺を送るために抜けて来たらしい。そんなに気を遣わなくていいのに。 申し訳ないって言ったら、気にするなと先輩は言う。 それに、俺一人だと危ないからって…… だから、なんで?  

ともだちにシェアしよう!