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千尋とお風呂と高槻先輩4[side 高槻]
[side 高槻]
俺は慌てて千尋を振り向かせる。
改めて胸の手術痕を見て、俺の胸がキュッと締め付けられた。
千尋の白い胸に大きく、歪に残された痕。
こいつは、いつも笑顔でのほほんとしていて忘れそうになるが、三年間の意識不明の状態から奇跡的に目覚めたんだ。
「……辛かったか?」
「最初はリハビリとか、大変でしたけど。もう問題ないです。気にしないでください。すみません。お見苦しい」
ふわりと千尋は微笑む。
その笑顔が儚げで、胸が苦しくなる。
「……見苦しくなんかない」
無意識に、傷痕に触れた。
白くて華奢な胸に引き攣れた傷痕。
それが逆に儚さとなって、千尋に対する庇護欲を駆り立てられる。
「先輩?」
俺はハッと我に返り、タオルを拾って千尋の頭に被せた。誤魔化すように、ゴシゴシと濡れた髪を拭く。
俺にされるがままになっている千尋の体から、ほのかに甘い香りがした。
「高槻先輩もお風呂入るとき、使っていいですよ。俺、バスソルトいっぱい持ってきたんで」
「だから、甘い匂いが……」
「ピーチです」
千尋が俺を見上げて、にっこりと笑う。
この格好でその顔はいかん!
「風呂上がりでも、そんな格好で出てくるんじゃない。いいか? 千尋」
「はぁい」
「お前は無防備すぎる。もう少し気をつけろ」
「?」
千尋はキョトンとしている。
純粋培養された素直な子なんだろうな。
今朝も放課後も、俺と一緒にいたから牽制にはなっていると思うが……
念のため、一週間は一緒に登下校しよう。
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