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千尋とひらパー兄さん2
「あれ。高槻先輩。おかえりなさい」
俺の腕を掴んでるのは、高槻先輩だった。
「千尋。もう遅い。部屋に戻れ」
「あ、はい」
遅いって言っても、まだ8時前だけど。
ひらパー兄さんは、「あ~あ」って残念な顔をしてる。
あっ! そうか。
「これ、どうぞ」
俺はうまい棒の明太子味を、ひらパー兄さんに渡した。
一瞬キョトンとした後、キツネ目を更に細くして、ひらパー兄さんが笑った。
「ありがとう。有栖川。お礼に今度、美味しいおやつ用意しとくから遊びにおいでよ」
「いやいや、うまい棒ひとつでそんな」
「寮長。もう遅いので部屋に戻ります」
「わっ。高槻先輩?」
俺は高槻先輩に腕を引かれて、引きずられるようにしてひらパー兄さんから離れた。
「またね。有栖川」
「あ。枚方さん。おやすみなさい」
高槻先輩とエレベーターに乗った。
なんか……機嫌悪い?
───あ!
「……高槻先輩。これ」
「ん?」
俺はうまい棒のコーンポタージュ味を差し出す。
くっ……食べたかったが仕方ない。俺にはまだチョコあ~んぱんがある。
「ぷっ」
「?」
高槻先輩が思わずといった感じに笑った。
「そんな悲しそうな顔して、うまい棒出すなよ」
げっ。恥ずかしい。
俺、そんな顔してたか。
「うまい棒、食べたかったんじゃないんですか?」
「え? 違うよ」
機嫌直ったみたいだけど、じゃあ、何で怒ってたんだ?
疑問に思ってるうちに、エレベーターが目的の階に着いた。
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