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千尋と小林と洋食屋2
俺と小林は昔ながらのレトロな洋食屋さんに入った。おお、懐かしい。
まだ早いから他に客がいない。
「お! いらっしゃい。小林君、久しぶりじゃない」
店長が厨房から顔を出した。
学生時代からお世話になった店長だ。
無精ヒゲで熊みたいにでっかいおっさんだ。
「その子は?」
「えっと……」
「遠い親戚です。はじめまして。有栖川です」
俺はちょろっと嘘を吐いた。
「へぇ、こんな可愛い親戚いたんだ」
「可愛い言うな」
店長はガハハと豪快に笑った。
俺たちは席に着いて注文をする。
小林はササミ梅しそ巻きセット。
「俺はチキンカツでトルコライス」
ここのトルコライス美味しいんだよ。
チキンカツかトンカツか選べるんだよね。
いろいろてんこ盛りでお得感満載なんだ。トルコ全然関係ないけど。
学生時代から、よく食べに来てたんだよね。顔を上げると、小林がじっと俺を見ていた。
「山田もよくチキンカツ頼んでたよ」
「ああ……うん」
……どうしよう。俺はちょっと迷ったけど、思い切って聞いてみる。
「あの、小林、さん」
「うん?」
「嫌ですか?」
「なにが?」
「俺が山田さんっぽい言動するの、嫌じゃない?」
小林はハッとした顔をした。
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