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千尋と小林と洋食屋3
「まぁ……少し複雑な気持ちではあるけど」
小林は苦笑して
「君は君で面白いよ。そのままでいい。変な気は使わないでいいからね」
俺の目を見て答えた。どうやら本心みたいだ。
「そっか」
ちょっとほっとした。
なんかやっぱり小林と疎遠になるのは嫌だから。
「あと、二人のときなら小林って呼んでいいから」
「え?」
「何度も呼び捨てにしかけてるじゃない。小林……さんって」
「バレたか」
「さすがに外ではね。子供が大人に呼び捨てはいかんでしょ」
「子供言うな」
「高校生でしょ。二人のときは小林でいいから」
「うん」
なんか嬉しくなって、えへへと笑った。
小林は小林のままだった。
物腰柔らかだけど、きちんと本音を話す。
小林はあんまり社交辞令を言わない。
嫌な事は嫌、大丈夫なことは大丈夫と、ちゃんと言ってくれる。
だから安心する。
厨房からいい匂いがしてきて、お待ちかねのトルコライスが来た。
「おおお。美味そう!いただきまーす」
「はい。いただきます」
懐かしい味にまたまた嬉しくなる。
俺はアツアツのカツを頬張った。
それを見て小林も笑った。
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