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小林と千尋と公園1

「ううう。苦しい……」 「無理して食べることなかったのに」 山田のときはペロっといけたトルコライスも、千尋の胃袋には多すぎたみたいだ。 俺の胃袋ははち切れそうだった。 「残すのは嫌だったんだよ」 小林はやれやれという顔をして言った。 「そこに小さい公園あったから、少し休もうか」 そもそも洋食屋自体、穴場的な場所にあるから、日曜日だけど公園も空いていた。 俺と小林はベンチに座った。 「……ごめん」 「別に」 俺はふぅと一息ついて、だらしなく背もたれにもたれて座った。 「特に急ぐ用事でもないんだし、のんびり休憩するといいよ」 「ありがとう。小林」 「どういたしまして」 自然に小林と呼んでいた。 近くに人もいないし、小林も自然に受け入れてる。 今日は天気も良く、暑くもなく寒くもなく、気持ちいい日だ。 腹いっぱいの俺は、ウトウトとうたた寝をしてしまった。 目覚めたとき、俺は小林の膝を枕にガン寝してた。 どれくらい寝てたのかな。 寝起きの頭でぼんやり見上げると、小林は小説を読んでいた。 パラリ、と紙のめくれる音が心地よかった。 小林という男は自分の世界を持っていて、今みたいに俺一人寝ちゃっても全く気にしない。 適当に自分の好きなように過ごす。 一緒にいて一番気楽で、気を使わなくてよくて、居心地いい相手だった。 「なに読んでんの?」 「キングの新作。シャイニングの続編だよ」 「ふ~ん」 本を読んでるときの小林の前髪の感じって好きだなぁ、とか思いながら、ぼ~っと見ていた。 「あと5ページで区切りいいから。ちょっと待って」 「うん」 俺たちのベンチはちょうど木陰になっていて、午後の風が心地よかった。 俺は小林の膝を枕にしたまま、ぼんやりしてた。

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