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千尋と神回避1
俺の腫れた目元は思った以上に目立ったみたいで、あれやこれや聞かれて最終的にはクラスの連中にプロレス映画を熱く語って終わった。
そしてランチタイム。
はい。一番楽しい時間です。
今日は美味しいパン屋のケータリングが来ていたので、天気もいいしパン買って中庭で食べる事にした。
時々来るんだって。ケータリング。
珍しいところで、トルコのケバブ屋が来てたこともあったらしい。
今日のは無添加パン屋さん。
俺はほうれん草とチーズのマフィンと白身魚フライの玄米パンのサンドイッチ。
美村はトマトとチーズのパニーニとロコモコベーグルサンド。
園田はアボカドと海老のサンドイッチとバナナマフィン。
どれも美味そうだ。
ちょうどいい木陰のベンチに3人座って、昼食にする。
─────あ!
「なぁ、園田」
「うん?」
「平野って知ってる?」
園田が固まった。
「?」
「なんで平野くんのこと知ってるの?」
「ああ。昨日バスで一緒だったんだよ」
園田のリアクションで確信した。
「……やっぱ、いじめられてんのか?」
園田と美村が顔を見合わせる。
「いじめとはちょっと違うんだけど……」
「園ちゃん、もういいんじゃない? アリスちゃんて生徒会メンバーをことごとく神回避してるじゃない~。園ちゃんの期待するような、萌え展開にはならないよぉ」
またよく分からん会話になった。
「だね。有栖川くんて、まだ一回も生徒会のメンバー見たことないでしょ」
「ない」
園田が言うには、俺がトイレに行ってるときとか、先生に呼び出されてるときとか、何度かニアミスで生徒会の連中が現れるのと入れ違ってるらしい。
美村は面白いくらいの神回避って笑ってる。
別に生徒会の連中なんて、見なくてよくね?
だいたい山田時代の高校生活でも生徒会長なんて、何やってるかもよく知らなかったし。
「うちの生徒会は特別だよ。人気ランキング上位の面々だからね」
この学園にはランキングなんてものがあるらしい。
「生徒会長の西大路さまは抱かれたいランキング1位なんだよ」
「それは他校の女子高生が抱かれたいって言ってるんだよな」
「違うよ。望応学園でだよ」
「……んっ? ……はぅあ! そうだった! ホモ多いんだった!」
「アリスちゃん……」
俺がうげぇって顔したら、美村が呆れた目で見てきた。
はっ。そういやコイツもホモか!
「いや。美村、俺お前に偏見は無いから!」
「俺もホモじゃないよぉ」
「えっ?」
「ん~。どっちかってゆうと、バイ?」
美村がへらっと笑った。
「俺、本気で惚れてくるような子には手ぇ出さないしね。お互い割り切った関係だけよぉ。ドライなの」
「お、おお?」
チャラ男の美学ってやつかしら。
いいんだか悪いんだか……。
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