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千尋と神回避3

美村が俺の手を掴んだ。 「ダメだよ。アリスちゃん」 「だって、おかしいじゃんか。親衛隊だの制裁だの言ってるけど、結局はただの八つ当たりの弱いものいじめだろ」 園田も俺を引き止めた。 「この学校は特殊なんだよ。生徒だけじゃなくて、その親の影響力もあるの」 俺は眉をひそめた。 「平野くんは中流家庭で顔も頭も平凡くん。生徒会メンバーや親衛隊は美形揃いで雲の上のお金持ちだよぉ。絶対的な権力があるわけよ。平野くんには何も無い」 「……美村お前、ひどいこと言うんだな」 「アリスちゃんも雲の上のお金持ちでしょぉ。その上、美形で1-Bの眠り姫って呼ばれて有名人なんだよ。アリスちゃんが思ってる以上にね。そのアリスちゃんが下手に平野くんに関わったら、余計に平野くんの立場は悪くなるよ。分かる?」 美村が珍しく真顔になった。 この学園にはこの学園のルールがあるみたいだ。俺と違って、こいつらはエスカレーター式に中等部から上がってきてる。 その暗黙のルールが俺には分からないし、知らない。 「俺も園田もこれがいい状況だなんて思ってないよ? それは分かってね。でも、現状では下手に関わらない方がいいこともあるんだよ」 「……ごめん。美村」 俺はまたベンチに座った。 「いいよぉ。アリスちゃんのそ~ゆうとこ、俺好きよ」 園田の目が輝いたが、無視をする。 「でも、知り合ったからにはほっとくなんてできないよ」 「あ。今、そいつ外泊してて、この学園にいないんだよ」 園田が思い出したように言った。 親衛隊の中に友達がいるらしい。園田の友達は制裁には反対派の生徒だって。 「なんか特別みたいでね。前もあったけど、連日外泊して授業に出てこないんだ。それで副会長とかすねちゃって部屋に籠ってるらしいよ」 「なんだそれ。ガキかよ」 いやガキか。こんなしょうもないことしてるんだもんな。 「今ならこっそり平野くんと話せるかもよ」 「園田ナイス!」 「でも夜にこっそりね。有栖川くん目立つんだから、気を付けてよね。正直、生徒会関係に関わるのは怖いから、表立っては動けないけど、僕らもフォローするし」 「ありがとう。でも大丈夫」 何もしないなんて嫌だし、無理だわ。 ふと自分が一度死んだときのことを思い出した。 OLさんに、女子大生に、中学生だっけ? 結果的に彼らに関わったことで、山田太郎は死んだ。 もし、あの日まっすぐ帰っていたら 彼らに関わらなかったら、山田太郎は生きていたのかもしれない。 でも、1ミリも後悔はしていない。 見てみないフリをする方が後悔する。 俺は平野にメールをした。

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