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千尋と神回避4[side 美村]

[side 美村] アリスちゃんは変わってる。 もともとクラスも一緒で、同学年の俺と同室になる予定だった。 けど、アリスちゃんの父親の希望で変更になったんだ。 一人の方が気楽でいいけど、少しばかりムカついた。 確かに俺はチャラいキャラだし、セフレも複数いる。 でも、本気で惚れてくるような相手には手は出さない。お互い割り切りだ。 閉ざされた世界での息抜きみたいなもんだ。 ……どうせ卒業すれば、お家の為に自由を手放さなくちゃいけない。 俺は俺を縛り付けるものが嫌い。 外見や家柄やお金、そんなものにつられて計算高くて人を利用するような人種が寄ってくる。 だから、髪を染めてカラコンをして、ピアスをつけて、制服を着崩す。 チャラい奴にはゆるい子だけが寄ってくるように。バカな子は好きだ。 嘘が下手で頭が悪くて、可愛いと思う。 園田は中等部から友達で、こいつは妄想が生き甲斐なので一緒にいて無害だ。 他人をどうこうしようなんて思わない、妄想だけで飯が食えるタイプ。 なんだかんだで腐れ縁だった。 アリスちゃんのことは、最初箱入り息子だと思ってたから、からかってやろうと声をかけた。 「俺、全然普通だし」 アリスちゃんがそう言ったとき、 出た出た。いい子ちゃんぶるタイプね。 猫かぶりかぁ、ヤダヤダ。 いつ化けの皮、はがれるかなぁ。 なんて、俺は意地悪い気持ちで聞いていた。 だけど、蓋を開ければ……本当に普通だった。 アリスちゃんは裏表が無い。 あれだけキレイな顔をして、雲の上のお金持ちの御子息さまだというのに。 昨日なんてバスで出かけてたし。 これには驚いた。有栖川家クラスの御子息がバスに乗って、安い洋食屋で飯食って、ファストファッションの服を買ってくるなんて。 で、プロレス映画で泣いてるし。 ……アリスちゃんは変わってる。 素直に謝るし、素直に「ありがとう」と言う。 ゲラゲラ笑うし、ポケットに30円のチョコを忍ばせていたりする。 そして、まっすぐに人を見る。 俺は初対面の時の意地悪い気持ちを恥じた。 平野と関わるのは、正直賛成しない。 それでも、一度会っただけの子を本気で心配してるアリスちゃんに心を動かされた。 アリスちゃんの思うようにしたらいいと思う。 この子は自由だ。 外見や家柄に全く縛られていない。 この学園の暗黙のルールにも。 俺みたいに見せかけだけの自由人とは違うから。 少し羨ましいと感じる。 とりあえず平野の話は一段落して、昼食を再開したアリスちゃんの横顔を、俺はじっと見ていた。 そんな俺の視線に気付いて、園ちゃんが目を輝かせていたが無視しといた。

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