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西大路と黒い稲妻3[side 西大路]
[side 西大路]
「……ん」
目を開ければ白い天井。
背中にベッドの感触。
「?」
体を起こして部屋を見回す。
ここは保健室だ。
腹が減って生徒会室を出たところまでは覚えている。
なぜか体のあちこちがぶつけたみたいに妙に痛い。
しかしよく寝た。頭がすっきりしている。だが、いつの間に保健室に来たんだ?
欠伸をして、頭をガシガシと掻いた。
なんだか猫だか犬だか、暖かい動物を抱いて癒された感覚が残っている。
ガチャリと保健室の扉が開いた。
「西大路くん、起きたんだね」
「ああ」
保険医が俺の顔を見て「顔色もいいね」と笑った。
「お前が俺をここに連れてきたのかよ?」
「違うよ。君は廊下で倒れてたんだって。千尋くんが運んでくれたんだよ」
「千尋?」
「1-Bの眠り姫だよ」
「ああ」
俺は見たことはないが、三年意識不明だったとかいう一年生だ。
かなり美形らしいが興味は無かった。
美形なんざ見慣れてる。
「もう。西大路くんを見ててって言ったのに、勝手に帰っちゃって」
俺は枕元に置かれたものに目を留めた。
「なんだコレ?」
それは小さなチョコだった。
『美味しさ稲妻級』『若い女性に大人気』だと?
嘘くせぇ。すげー安っぽい菓子だった。
「千尋くんが置いてったのかな?」
安っぽいチョコの包みを見てたら、ぐうと腹が鳴った。
俺は包みを破いてチョコを食べた。
うまっ!
予想外に美味いぞ。ブラックサンダー。
チョコはふたつ置いてあった。もう一つの方は『モーニングサンダー』と書いてある。
なんだこのネーミングは。
「西大路くん。君ひとりで頑張るのも限界なんじゃないの?いい加減、生徒会の……」
「うるせえよ」
保険医が説教をしそうな雰囲気だったので、俺はチョコをポケットに入れて保健室を出た。
しばらく歩いて、ポケットから出したモーニングサンダーとかいうチョコを食べる。
これも美味いわ。
………1-Bの眠り姫ね。
俺は千尋とかいう一年生に興味を持った。
まぁ、今は余裕はないが……いずれ顔を拝んでやる。
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