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千尋と風紀委員長3[side 御影]
[side 御影]
風紀室に珍しく高槻に客が来た。
高槻の同室で、噂の眠り姫だ。
へぇ……確かに綺麗な顔してるな。
三年間意識不明だったことから、生徒達が勝手に「1-Bの眠り姫」と呼んでいた。
それに高槻が朝夕の登下校をボディガードよろしく一緒にしていて、眠り姫に色目を使う生徒を牽制しまくっているという。
影で「眠り姫と王子様」だとか「番犬」だとか言われてるんだが、高槻は気にしていない。
生の眠り姫を見て、なるほどな、と思う。
艶のある黒髪に潤んだ黒い瞳。薄く色付いた唇。眠り姫とゆうより白雪姫だな。
ちょっといない感じの美形だ。こりゃあ高槻も心配になるわけだ。
「美人の眠り姫だな」と、俺が言ったら、ムッとした顔をした。
その顔も可愛いかったが、意外と気が強いみたいだな。
「園田の部屋で、勉強教えてもらうんで……」
─────嘘だな。
俺はピクリと片眉を上げた。嘘を嗅ぎ分けるのは俺の特技だ。
眠り姫は高槻に嘘をついている。
高槻は全く疑っていない。
お姫様は俺の視線に居心地悪そうにして出て行った。
「高槻。お前、過保護すぎやしないか?」
「いいえ。千尋は純粋培養された素直な子なんです。無防備すぎるから、俺が気をつけてやらないと……」
それが過保護っつうんだよ。
高槻はお姫様をすっかり信じているが……
遅れてやって来た新入生は、二人ともうさんくさい奴らしいな。
俺は眠り姫の出て行ったドアをしばらく見つめていた。
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