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千尋と密会3
バスで平野に出会ったこと、いじめのこと、とりあえず委員長に全部話した。生徒会長と遭遇したことも。
で、生徒会長とエレベーターのくだりで委員長が爆笑した。
「ハハハッ! あの俺様野郎を挟んだのか! 最高だ。気に入った!」
「ワザとじゃないですよ!」
委員長はゲハゲハ笑ってる。
すっげーゲラだ。てゆうか……
「生徒会長と仲悪いんですか?」
「……ああ。犬猿の仲だな」
委員長がピタリと笑い止んだ。
「平野のこと、どうするんです?」
「………」
「知ってたんでしょ?」
これは、勘だけど。
「まあな」
「なんで助けないんです?」
「本人が必要無いと言っていた」
その言葉にカチンときた。
「はぁ!? 見て見ぬふりしてただけだろ。平野は俺に助けてって言ったぞ」
怒る俺を委員長は面白そうに見てる。
「あんた風紀委員だろ! なんでいじめを放置してんだよ!?」
「まぁ待て。放置してたわけじゃない。ちゃんと親衛隊の奴らの動きは把握してる」
「でも……」
「ガチの制裁ってのはな。平野みたいなチビが相手ならレイプが相場なんだよ」
「は!?」
「悪くて輪姦だ。被害者本人が訴えないから、首謀者が捕まることもない。男にレイプされました、なんて親に知られたくないからな」
「そんなこと……」
信じられない。
高校だろ? しかも金持ちお坊ちゃんの。
「閉鎖された世界で、歪んだ奴も多いんだよ。エスカレーター式に上がってきた奴なら尚更だ。美形信奉に親衛隊に制裁。生徒間のカースト制を当たり前だと思ってる。この学園内だけでなら、無茶が通用するんだ」
唖然としている俺に委員長が続ける。
「平野が今受けてる嫌がらせなんて、可愛いもんだ。最悪の事態にならないように見張ってるから、そこは安心しろ」
それに……と続けた。
「お前は平野に関わるな。お前が相手なら喜んで『制裁』したいって野郎が山のように出てくるぞ」
「………」
気持ちが悪い。
なんなんだ。この学園は。
「嫌です」
「は?」
「平野とはもう関わっちゃってるんで。可愛いいじめってゆうけど、平野は傷ついてる。今更、知らん顔できません」
俺は委員長をじっと見て言った。
「……お前、変わってるな」
委員長が目を細めて、しみじみと言う。
「変わってるのは、おたくら望応学園の生徒だと思うけど」
「確かにな。ま、好きにすればいいさ」
委員長がハハッと笑った。
「そろそろ部屋に戻れ。高槻が心配する」
俺を玄関まで見送った委員長が含みを持たせた声で言った。
「桜ノ宮には接触するな」
「なにかあるんですか?」
「いいから、可愛く良い子にしてろ。な?」
俺の頭を撫でる委員長の手を振り払って
「可愛いって言うな!」
俺は委員長の部屋を出て行った。
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