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千尋と両手に風紀2
「高槻。俺にもコーヒー」
「はい」
委員長は当然のように言って、椅子に座る。
「な、何してるんです?」
「ん? 一緒に学校行こうと思ってな」
「なんで?」
「千尋。委員長から聞いた。昨夜は平野に会いに行ってたんだってな」
「えっ!?……あ! あんた、しゃべったのか!」
昨夜、高槻先輩は委員長から電話で全部聞いたらしい。
「悪いな。だが、高槻に嘘は良くない。お前を心配してるんだぞ」
俺は高槻先輩を見た。少し悲しそうな顔をしている。
「………ごめんなさい」
「千尋………」
「でも俺、平野のこと、ほっとけない」
委員長がコーヒーを一口飲んで言った。
「それは好きにすればいい。その代わり、しばらく一緒に登校するぞ」
「え?」
「番犬が二匹に増えるんだ。お前に手を出そうって奴がいても、ビビって出せなくなる」
高槻先輩の顔を見ると、うんうんって頷いてる。
いやいや。あんた、番犬言われてますよ?
「番犬って………」
「高槻がお前に過保護なのには訳がある。一年前、悪質な『制裁』があったんだ」
「あっ」
制裁って………レイプのことだ。
「この件は無かったことにされているし、被害にあった生徒も学校を辞めた。加害者であろう生徒は、無事卒業して大学に進学してる」
「そんなことっ!」
「親が権力者の子供は、それが通用するんだよ。一部、この学園内でなら何をしてもいい立場にある生徒がいるのも事実だ」
俺はゾッとした。
「まぁ、現場に遭遇すりゃあ、俺も高槻もそんなの気にせず手が出るけどな」
委員長がハハッと笑った。
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